第222話 茶の木

「この辺りは野生の茶の木が多いんだ」


 ウィルコの力で茶の木が多く時世する地域に転移した。見た目はただの木だ。この木から葉っぱを摘んで加工してお茶にしようだなんて普通は考えないだろう。


「お茶の繁殖は挿し木で行うんだよね、少し鉢植えにして王都に持ち帰ろうよ」

「そうだね、国内でも栽培出来たらいいよね」

 でも苗が大きくなるまで4~8年かかるから当分は高級品だ。一度植えると30~50年程度は収穫可能らしい。


「生葉の摘採は収穫量や品質に影響するけど摘採時期の見極めは経験が必要なんだよね」

「いきなり美味しいお茶は出来そうにないね」

「飲める状態の茶葉を持っていって、実際に飲んで貰おうと思うんだ」

「それは話が早いかもな」


 いま私たちがいる場所では西の方で手に入れたと言って、国内では東方で入手したことにする。


「もうすぐ目的地のマルワル村だよ」

 私たちは茶の木に囲まれたマルワル村を目指している。



「村の入り口じゃない?門番ぽい人がいるよ」

 御者席に座るウィルコと私が門番さんに手を振ると振り返してくれた。



「行商か!」

「遠くから来てくれたんだな」

 マルワル村でも歓迎され、広場でデモ販売させてもらった。

 マルワル村にもチーズがあった。シャルワル村はヤギが多かったけどマルワル村は水牛が多かった。牛乳に抵抗が無かったのでグラタンのデモも好評だった。



 でも1番反応があったのはタンドリーチキンだった。

「シャルワル村やトリワル村、キリワル村で採れるスパイスで作れるのか」

「うちの村でも採れたら良いのに…」

 マルワル村の皆さんの落胆ぶりが凄い。罪の意識に襲われそう。



「でもマルワル村には茶の木があるじゃない?」

「そうだぞ、ここに来る途中の木は、ほぼすべて茶の木じゃないか?」

「茶の木?」

「それでタンドリーチキンを作れるのか?」

村人たちの顔に希望が見えた。


「それは無理だけど…」

村人たちが再び項垂れた。



 なんか…凄く悪いことしている気持ちになる…。

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