第29話 シャウエン

 シャウエン滞在中は基本的に結界でご飯になるが、1日1回は市場の食べ歩きもした。屋台には肉のケバブがあるからルイスとモニカの機嫌が良い。焼き立てのケバブは美味しいもんね!


「それで、ここでは何を仕入れるんだ?」

 腹いっぱい肉を食らった2人がやっとお仕事気分になってくれた。


「アルガンオイルだよ!この地域にしかないアルガンツリーの実から採れるオイルでね、顔にもボディにも髪にも使える万能な美容アイテムだよ!」

 ルイスとモニカが無感動だ。


「あとはローズウォーターも!水蒸気蒸留法で抽出した 100%オーガニックだよ!化粧水やボディローションに使いたいよね!アルガンオイルと一緒に使って保湿&美肌ね!」

……私と比べてルイスとモニカのテンションが低い。低すぎる。


「だ、ダメかなあ…」

 自信を無くす反応の薄さ。

「いやダメって事は無いだろう、俺たちに興味が無いだけで」

「そうね食べられないけど悪く無いんじゃ無いかしら」

 食べられないものには本当に興味が無いんだな…。

「あとはクエンカで仕入れたメスティンを卸したいな、ダッチオーブンは売れなさそう。この地域の食文化に相応しい調理器具が既に揃ってるみたいだから不要だよね」


 ビジネスライクな2人を通じてアルガンオイルとローズウォーターを仕入れた。2人の反応はともかく贅沢品にあたるものが必要とされるのは、もう少し先かもしれない。ここで仕入れたものはアイテムボックスに寝かせて置いてもいいかも。


 逆にメスティンは売れた。遊牧民に需要があるらしい。また持ってこい、次はいつ来る?どのくらいの量を持ってこられる?と迫られたルイスとモニカが嫌そうだった。クエンカでいくらでも買えると教えて自分たちで直接仕入れるよう薦めていた。またシャウエンに来たかったのに…。


「ねえルイスとモニカは、ここに来るのに乗り気じゃ無いでしょう?だから最後に観光したいな、砂漠ツアー!」

「そのツアーは途中でちょいちょい抜けて結界に帰れないだろう?」

「うん」

「どんな食事がでるの?」


 それは聞かないでほしいんだけど…。

「参加してみないと分からないかな…」


 本当は知ってます。野菜多めであっさり味のタジン鍋にクスクス、たまにケバブとオムレツの繰り返しです。ケバブは少量です。


「宿で申し込めるくらいだから聞けばいいだろう」

 あ、ルイスのバカ!


「野菜多めであっさり味のタジン鍋にクスクス、たまに少量のケバブとオムレツの繰り返しだそうだ」

「……」


 狼化したルイスとモニカに後ろからバクッと襟を咥えられ、馬車の荷台に乗せられて王都に帰りました。

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