第232話 ビドワル村

「ええと…」

「ル…ルイスさん?モニカさん?」

 マヘンドラさんとシカールさんが絶望感を醸すルイスとモニカを見る。


「あのね、この2人は暑いのが無理なんだ」


「ここより南は無理よ…」

「一年中暑いのか…」

 マヘンドラさんとシカールさんがドン引きだ。暑さが当たり前な2人からすれば大袈裟に感じられるだろう。


「ねえ、塩を売りにいくって言ってたけど2人は商人なの?」

「そうだよカレンちゃん」

「シャルワル村へも行く予定なんだよ」


ウィルコの目が光った。



「マヘンドラさんとシカールさんに相談があるんだけど!カレーに必要なスパイスを取りまとめて運んでもらえないかな?」

「ウィルコくん?」

「カレーは他の地域でも受け入れられるよ。ただ、この地域でないと育たないスパイスがある。それを運んでみない?きっと売れるよ」


「ちょっと待って!」

「そうだ!売れる見込みがあるからこそ他人に権利を譲るものじゃない」


 マヘンドラさんとシカールさんはフェアな商人だった。



「それにカレーはウィルコくんの発明だろう?」

── いいえ地球のパクリです。


「料理なんて、どこでだって生まれるよ」

── レシピをみて作りました。


 

「ちょっと冷静になろうか」

「そうだな、思いつきで話して良いことじゃない」



 フェアなマヘンドラさんとシカールさんが冷却期間を提案したので今日はここまで。明日改めて話すことになった。



*******


「おはよう!」

「おはようカレンちゃん」


 マヘンドラさんとシカールさんと一緒に朝ごはんを食べて、昨日の続きを話すことになった。



「僕たちはマヘンドラさんとシカールさんにカレーの材料になるスパイスを扱って欲しいんだ」

「2人は全部の村とすでに取り引きしていて信頼関係もあるだろう?」


「ウィルコ君たちに利益が無いだろう?」


「私たちの国まで売りにきて欲しいの」

「2人が直接足を運ばずとも行商に託して流通するようにしてくれれば充分だよ」


「ルイスさんもモニカさんも…」


「増産して価格が高騰しないように各村に働きかけて欲しい」


「ただ西へ運ぶだけじゃ皆さんに利益が出ないだろう?」

「ちゃんと運ばないと…」


「私たちは普通に入手出来るようになればいいわ。きちんと取り引きしてくれる商人に売ってちょうだい。そうしたら自然と流通するわよね」

「そうだね!」


「そうだねって!」

「ルイスさんも頷いているし…」



「カレンが学校に通うようになるから、今後は遠くに仕入れに行けなくなくなるからな!それにカレーはカレンも好きだから王都でも食べさせてやりたいし」


「ルイスさん…」

「カレンちゃん…」


 ちなみに話し合いの間、私はルイスに抱っこされてスリスリされていた。そのためマヘンドラさんとシカールさんに『カレンのために』という理由で納得されてしまった。



「シャルワル村や他の村でもカレーやタンドリーチキンに使うスパイスは販売してきたんだよ」

「あと4〜5回くらい作ったら無くなるから売りに行ったら歓迎されるわよ」


「ウィルコ君、モニカさん…」


 マヘンドラさんとシカールさんにカレーとタンドリーチキンの作り方を教えると、すべての材料を近隣の村で調達出来ることが分かった。



 マヘンドラさんもシカールさんも、もともと西の国に興味があったらしく、量産出来るようになったら西へ販売に行きたいと言ってくれた。

 数年は掛かるだろうから気長に待つと話して2人と分かれた。

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