第107話 トラカイ村に乾燥パスタ
次の日は朝から広場でドライフルーツのデモ販売をした。
日持ちする甘いものは人気で、このトラカイ村でもたくさん売れた。グラノーラ・バーに加工する方法を伝えたら村人たちは作る気になっていた。オートミールを美味しく食べる方法って貴重だよね。
販売が終わったら仕入れだが、村のシンプルで上質なリネンはトーマスさんが山ほど仕入れたらしいので、もうそんなに必要無さそうだ。
そんな訳で私たちは海産物を見にきた。トラカイ村は海に面していて海産物も獲れるんだよね。
「魚とイカと…こんなものかな?」
「ありがとうウィルコ」
海産物はウィルコに任せた。これは私たちが食べるために買った。寒くなってきたからブイヤベースを作りたいんだ、ルイスとモニカには肉でも焼くか。
トラカイ村で海産物を仕入れた後、近隣の村で保存食を販売してからトラカイ村に戻ってみたらヨナスさんに呼ばれた。訪ねてみるとヨナスさんの工房には村長さんもいた。
「待たせて悪かった。これが嬢ちゃんで、これはモニカさん。こっちはルイスとウィルコだ。隣の部屋で着てみてくれ」
モニカと私にお揃いの生地でワンピース。私にはショート丈のカーディガン。モニカにはロング丈。
「モニカ似合う〜!」
「カレンこそ可愛いわよ」
キャッキャしていたら隣の部屋で着替えていたルイスとウィルコに呼ばれた。
同じ生地でルイスとウィルコにはシャツを仕立ててくれていたみたい。
「わー!2人とも似合うよ」
「可愛いよカレン」
「ルイスとお揃いなんて久しぶりだわ」
「いいな!こういうの」
「想像以上だな」
ヨナスさんが腕を組んで満足そうにつぶやいた。
「ありがとうヨナスさん、僕にも家族が出来たみたいで嬉しいよ」
「ウィルコも似合ってるよ」
「ありがとうカレン」
「それでちょっと頼みがある」
ヨナスさんの頼みってなんだろうと思ったら、切り出したのは村長さんだった。
「王都とか、他の村で出来るだけアピールしてもらえないか?」
そんなの頼まれるまでもないんだけど…。
「もちろん、そのつもりよ」
「この前は姉ちゃんとカレンの2人であっちこっち出掛けてたから今度は俺たちとも出掛けてくれよ」
「はいはい。4人で出掛けましょうね」
モニカがお姉さんぽくて、ルイスが弟っぽいのはレアかも。ルイスはモニカに甘えながら私を抱き上げる。人懐こいワンコみたいだな。
宣伝のために提供してくれるって言ってたけど、そういう訳にはいかない。私たちは生活に困っていないのだから。
話し合いの結果、いま着ているものは好意としていただいて、その他の欲しかった生地は定価で買うことになった。
「…あのなぁ、これじゃ物々交換だろ」
私たちも好意でギフトを贈った。保存食の乾麺や乾燥マカロニや豆、燻製やオイル漬けを。
「俺たちにも思惑はある」
「この村は食べ慣れないものを受け入れないって言っていたでしょう?」
「冬の間に工夫してこの村で好まれる食べ方を見つけてよ、乾燥パスタの食べ方は僕が教えたカルボナーラがオススメ」
「小さく折ってスープに入れるとお腹にたまるから一皿で食事になるよ」
そして次からは村を訪れた商人から買ってもらいたい。私たちの好意はヨナスさんや村長さんと同じ狙いだと言ったら前向きに受け入れてくれた。村の料理自慢たちを巻き込むか…とか楽しそうに相談してた。
この冬を乗り切るために役立てて欲しいし、今後のためにも新しい保存食を受け入れて欲しい。今日渡した乾麺は常温で保存しても食中毒の心配はないから安心だよ。
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