第149話 北部へ
「北部へ行くよ!」
「準備は出来ているぞ」
「転移でサクサク回るんでしょう?」
「そうだよ。じゃあ行くよ」
ウィルコは情緒がない。
あっという間にエメン村に着いた。
3回目の訪問だし入村はスムーズだった。チーズを買い付けに王都から定期的に商人がやってくるようになったけれど雪が降るようになってからは、商人の訪れも途絶えているらしく歓迎された。
ちなみに今回の北部の行商ツアーは北部のみんなの記憶には残らないようにウィルコが操作している。本来、雪の季節に行商する商人はいないから不自然過ぎるのだ。
代わりに来年はもっと冬支度をしっかりしないと冬の生活が厳しいな…という記憶を刻むことになった。
エメン村に着いた私たちは村長のアンリさんと奥さんのメラニーさんの家を訪れた。
「赤ちゃんが大きくなってる!」
「そうなの、私の栄養状態が良いからかしら」
夏よりだいぶ大きくなった赤ちゃんを重そうに抱っこするメラニーさんが幸せそうだ。
「メラニーさんも元気そうで良かった」
「みなさんのおかげで今年の冬は楽に過ごせているのよ」
チーズが売れたおかげで、いつもより冬支度が出来たようで良かった。
「ウィルコ神のご神託にあったモヤシやブロッコリースプラウトの栽培も行なっているんです。冬でも野菜を食べられるのはありがたいです」
「どうやって食べているの?」
「何にでも入れていますよ、もやしグラタンとか、もやしシチューとか」
グラタンやシチューにもやし?
…合うのかな…でもアンリさんもメラニーさんもニコニコだ。ここはスルーしよう。
「俺たちは小麦粉や乾麺、豆なんかを中心に持ってきたんだが?」
「それは助かります!すぐに村内に知らせましょう!」
アンリさんの働きかけですぐに村の全世帯に知らせが行き渡り、販売を行った。今回はデモンストレーションは無しで販売だけを行ったので2〜3時間で終わって次の村へ向かった。
どこの村も同じような状況で、もやし栽培を盛んに行なって、いろんな料理をもやしでかさ増ししているとのことだった。
もやしは焼きそばやナムルや酢の物で食べたい私は無言でやり過ごした。
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