第199話 スパムを食べたい
「ずいぶん作ったのね」
ウィルコと私が作ったジャムのビンを前にモニカが言った。
── ルイスとモニカが作った加工肉ほどじゃないですよ。
2人の手により大量のベーコンとコンビーフとミートローフが出来た。私たちが作ったジャムの5倍は出来た。
ルイスとモニカは途中で飽きないし投げ出さなかった。私には無理な量の肉塊を美味しく仕上げたルイスとモニカはすごい。
「交易に使う目的だから量が必要かなって思ったんだ」
「ルイスとモニカもたくさん作ったよね」
「ああ、当分は遠慮なく食えるぞ」
「ウィルコとカレンも丸ごと食べる?」
── そんなに食べられないってば!
モニカが掲げるミートローフは私の頭くらい大きかった。…ウィルコなら完食出来るかもしれないけど。
「ねえカレンの世界では、こういう旅の時の食料はどうしているの?」
「こういう旅をすることは無いけど…近いのはキャンプとか登山かな。調理器具はメスティンやダッチオーブンを持っていったりするよ」
「食材は?」
「レトルトや缶詰とかかな?」
「肉の缶詰があるの?」
「コンビーフやランチョンミートかな」
「僕、知ってる!スパムって缶詰を見たことあるよ」
ウィルコがキラキラしてる。映画かドラマで見たらしい。
「すぱむって?」
「どんな肉だ?」
モニカ狼とルイス狼もグイグイ来る。
「ちょっと待ってね」
タブレットでランチョンミートで検索した料理画像一欄を見せたら3人の目の色が変わった。ウィルコまで!?
「このスパム結びってハワイのやつだ!僕、ご飯を炊いてくる!」
そういえばウィルコは炭水化物大好きだったわ…。
「チャンプルーって料理が多いのね」
「ポーク玉子って美味そうだな!おむすびは良いな」
「じゃあ今日のご飯はスパムむすびとスパムのチャンプルーしようよ」
缶詰から出してカットしたランチョンミートはフライパンで両面をこんがりと焼き色がつくまで焼く。ランチョンミートの大きさに合わせて卵焼きも作っておく。薄焼き卵のレシピが多いけど私はぶ厚く焼くよ!
あとはランチョンミートの大きさに合わせたおむすびにして海苔を巻いて出来上がり。
ゴーヤチャンプルーも作ろう。ゴーヤーは縦半分に切ってワタをとって薄切り、塩で揉んでしんなりしたら、水で洗って水けを絞る。
ランチョンミートは短冊切り。水切りしたお豆腐は一口大にちぎる。
フライパンでランチョンミートを炒める。こんがり焼き色がついたら豆腐を加え、さらに炒めたらゴーヤーを加えて軽く炒める。
塩胡椒、醤油で味を整えたら溶き卵を回し入れ、半熟になるまで全体を混ぜる。
この他にタコライスとクーブイリチーも作った。
「食べようか!」
今日はルイスよりもモニカよりも、ウィルコが張り切っていた。
「美味しいよ!」
大きなスパムむすびがあっという間にウィルコのお腹に消えた。
「憧れのスパムが大好きなおむすびになるなんて…」
「良かったね!私の分は小さく作ってくれてありがと」
「足りる?」
「充分だよ!タコライスも食べたいし」
ウィルコが作ってくれたスパムむすびが美味しい。チャンプルーとクーブイリチーも美味しい、沖縄料理って美味しいよねえ。
「美味いな!」
「この缶詰は再現出来ないわね…」
スパムむすびをモリモリ食べながらスパムむすびを絶賛するルイスとモニカ。さすがに缶詰の再現は難しい。ネットに再現レシピが落ちていたら挑戦出来なくもないけどお手頃で美味しい缶詰があるもんね。
「コンビーフで作ってみたら?」
「それなら出来そうね!」
「まあ、お米が見つからないと無理だけどね」
「………」
「………」
「………」
ルイスとモニカとウィルコが無言になったが、その後全員一致でお米と味噌と醤油を求めて東へ向かうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます