第239話 田舎風パテ
「モニカが元気になって良かった〜!」
モフモフの首の毛皮に顔を埋めて抱きつく。
「心配かけたわね」
モニカが鼻先で私の頬をモフっと突く。
「良かったモニカ」
「ウィルコもありがとう」
「では私たちは帰るとしましょうか」
「そうね」
「来てくれてありがとう、シモン、テラ。私には注射もお薬も必要なかったでしょう?」
「………そうですね」
「モニカが元気になって良かったわ」
シモンさんとテラ様は真相を秘密にして、次回も同じ作戦で対応するつもりのようだ。
何食わぬ顔でモニカをモフってから帰っていった。
「2〜3日は結界でゆっくりしよう。旅の再開はその後ね」
「悪いわねウィルコ」
「モニカとルイスの健康の方が大事だよ」
ウィルコがモニカ狼とルイス狼をモフる。
「僕らは作り置きでもしようか」
「そうだね」
ルイス狼は大きくなったモニカ狼に甘えていてくれ。
「僕、前々からこれを作ってみたかったんだ」
ウィルコがタブレットで検索して見せてくれたのはパテ・ド・カンパーニュ、田舎風パテだった。
「いいね!じゃあ材料を買うね」
豚バラ肉のブロックや豚レバーや鳥レバーなどを多めに買った。
「まずは下ごしらえだね、ブロックや豚レバーや鳥レバーから血合いや余分な脂肪などを取り除いたらレバーは牛乳につけて臭み抜き」
ウィルコが手際良く作業してくれた。
「豚バラのブロックは角切り、豚レバーと鳥レバーはスライス」
ウィルコがあっという間にカットした。今日の私は見てるだけだな。
お肉とレバーを白ワイン、塩胡椒、ナツメグパウダー、シナモン、オールスパイス、クミンシード、ローリエで揉みこむ。漬け込んでいる間に玉ねぎのみじん切りをよく炒めて冷ましておく。
漬け込んでいたお肉とレバーを半分くらい包丁で細かく刻む。残りはフードプロセッサーで滑らかにする。
ローリエを取り除いて溶き卵を加えた材料を全部、粘りが出るまで混ぜる。ここで薄皮をむいたピスタチオも入れる。緑色が綺麗だし食感がアクセントになって美味しいんだよね。
パウンド型の内側にラップを敷いたら生ハムを底と側面に敷き詰める。そこによく混ぜたお肉をみっちりと詰めたら残りの生ハムで覆ってローリエを乗せる。
アルミホイルで蓋をしてから天板に載せ、天板にお湯を張って蒸し焼きにする。
焼くと膨らむので焼き上がったら重しを乗せると綺麗な直方体に仕上がるのだ。
焼いているオーブンの前でモニカ狼とルイス狼が尻尾を振っていて日常が戻ってきたと感じる。
ウィルコを見るとルイス狼とモニカ狼を見つめる目が優しい。同じように感じているみたいで嬉しい。
チーン!とオーブンが鳴った。
「ほら取り出すからモニカもルイスも離れて、危ないよ」
狼化すると我儘になるモニカ狼とルイス狼だが、こういう時は聞き分けが良い。
焼き上がったパウンド型をテーブルに並べる。ルイスとモニカがたくさん食べる前提で12本焼いたのだ。
「美味しそうだな!」
「ねえウィルコ、味味したいわ」
「肉汁が落ち着くまで無理だよ。肉汁が流れちゃったら残念でしょう?」
「仕方ないわね」
肉汁のためなら良い子になるモニカ狼だった。
「粗熱が取れて肉汁が落ち着いたら型から取り出せるようになるから」
冷めるのを待つ間、ウィルコと2人でモニカ狼とルイス狼のブラッシングをしたら今日もたくさん抜けた。
「ねえ、そろそろいいんじゃない?」
モニカ狼とルイス狼の尻尾がソワソワと落ち着かない。
「じゃあご飯にしようか」
ウィルコが切り分けてからピクルスや粒マスタードを添えて盛り付けてくれた。
「美味しいわ!」
「生ハムで巻いたのとベーコンで巻いたのと2種類も作ってくれたんだな!どっちも美味い」
モニカがたくさん食べた。
元気でお腹ぽっこりなモニカ狼とルイス狼が可愛い。
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