第238話 騙されるモニちゃん

「お豆腐の肉そぼろ餡かけ、美味しいわ」

今日のご飯もモニちゃん特別メニューだ。


「ごちそうさま」

「もういいの?」

「ええ、ありがとう」


「じゃあお薬を…」

「寝るわ」


モニちゃんが逃げた。



モニちゃんの後で私たちもご飯。

「モニカの特別メニューの余った材料で今日はボロネーゼにしたよ」

「ルイスの好きなカルボナーラもあるよ」

「サンキュー、ウィルコ、カレン」


 テーブルの中央に何種類かのパスタを置いてビュッフェ形式のご飯だ。


「やっぱりカルボナーラは美味いな!」

「このボロネーゼに削ったチーズを多めに掛けたいわ、シモンは?」

「そうですね私も追加します」

「カプレーゼも美味しいね」

「僕はゼッポリーニが気に入ったよ、また食べたいな」



「モニもパスタ食べる!」


 いつものように振り返るとモニカがいた。


「はいはい」

「こちらにどうぞ」

 シモンさんとテラ様は完全に諦めており、さっさと座らせて食べたいものを取り分けていた。


「美味しいわ!」

「良かったですね」


 今日もたくさん食べて気分が悪くなっていたが戻さなかった。


「回復してきたんじゃない?」

「そうですね、食べられる量も増えていますし」


 テラ様とシモンさんの相談が雑だった。ぐったりするモニちゃんと涙目で寄り添うルイス狼の横で雑な感じでモニカの回復予想をしていた。



 翌日、シモンさんからモニカのメニューをリクエストされた。

「今日のモニカのメニューは肉団子にしてください」

「甘酢餡をからめるやつ?」

「いいえ、どろっとしたソースを絡めない肉団子です」

「じゃあお肉の味付けを濃いめにしようか」


 シンプルな味付けの肉団子を揚げた。肉団子はモニカだけの特別メニューで少しだけ作って欲しいとのことだったので私たちのメインは味付けした挽肉にマッシュポテトを重ねて焼いたシェファーズパイにした。



「今日はモニちゃんに特別な肉団子がありますよ」

「シモンの肉団子ね!」

「はい、どうぞ」

「あーん」

 シモンさんが差し出す肉団子を一口で食べるモニちゃん。


「シモンの肉団子はいつも後味が苦いわ」

「モニちゃんの具合が悪いからですよ」

「そうなの?」

「胃が荒れていると味覚がおかしくなるでしょう?」

「そういう時もあるわね!」


 モニちゃんはシモンさんが差し出す肉団子を完食し、ご飯もたくさん食べた。



── だが私たちは見てしまった。


 シモンさんが顆粒状の飲み薬の上で肉団子をコロコロして肉団子に飲み薬をまぶすのを。揚げたての肉団子は胡麻団子みたいになった。


「…シモン、せめて中に混ぜようよ」

「そうだよシモンさん、それじゃすぐにバレて吐き出されるよ」

「大丈夫ですよ」


── そんなやり取りがあった。


「僕、絶対に吐き出されると思ったんだ」

「私も」

「回復期はいつも肉団子なのよ。モニカが小さな頃は生肉を適当に丸めていたわね」

「テラ様…」


 モニちゃんの我儘ぶりもなかなかだが、シモンさんとテラ様によるモニちゃんの扱いもなかなかだった。



 翌日、モニちゃんは大きなモニカに戻り、ルイス狼がキュンキュン鳴いて喜んだ。

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