【番外編】もう1つの世界 1
「獣人が暮らす世界?」
「そう。獣人とヒューマンが暮らす世界。割合は獣人が3割くらいで少ないかな」
私が生まれ直した後でウィルコがケアすることになった3つの世界のうちの1つは獣人が暮らす世界らしい。
「いろんなタイプの獣人がいるの?」
「うん。カレンみたいな狼耳と尻尾を持つ獣人もいるし猫や虎、熊、いろいろなタイプの獣人がいるよ」
「熊獣人の子供とか、ちょこんとした耳と尻尾が可愛いだろうねえ」
ウィルコとルイスとモニカとヨルと神様の視線が私に集まる。…確かに大人の記憶がありすぎて自分がちびっ子だと忘れがちだけど今は私も狼耳と尻尾付きの子供だった。
「でもね、住み分けが出来すぎてて両方の種族に交流がほとんどないんだ」
「言葉は通じるの?」
「うん。管理者都合で共通化した」
「………」
そんな乱暴な…という気持ちは飲み込んだ。
「文化的に違いってあるの?食べ物が違うとか、種族的なタブーとか」
「見た目以外は同じ!獣人もカレーや玉ねぎを食べるよ。結婚も出来るし子供も産まれるよ。違う種族の獣人同士の結婚は普通だし。タブーってのは無いよ。争いのもとになりそうだしね」
虎の獣人とアライグマの獣人の結婚も普通にあるらしい。その場合、産まれる子供は虎獣人かアライグマ獣人どちらか。虎の耳にアライグマの尻尾はないらしい。
「住み分け出来てて争いがないなら良いね!」
「そこが悩みなんだ」
「どうして?」
「熊獣人は養蜂が得意とか種族単位で大きな産業集団を形成しているからヒューマンとも交流してほしいんだよね」
確かに文化や産業、経済の発展には交流が必要かも。
「狼獣人は何が得意なの?」
もしも自分たちが、その世界に暮らしていたらと考えると楽しい。
「狼獣人は狩人だよ。狩猟や採集が得意だから。定住して畑を作っているのは
狩人の狼族って、ちょっとカッコいいかも。
「それでお願いがあるんだ」
「獣人がヒューマンの街に行ってみたら、どんな反応があるか試してみたいのか?」
「そう!僕も一緒に行くから」
「俺は構わない。カレンが行きたがっているしな」
「もう1つのウィルコの世界を見てみたい!」
「私も」
「俺もだ」
モニカとヨルも一緒だ。
「いいな…」
神様が淋しそうだ。
「さすがに父さんが降臨すると行った先々が祝福され過ぎて世界のバランスが崩れるからダメだよ」
「そうね、パパが自分で作ったルールですものね」
ウィルコとモニカの一言で諦めたようだが背中が丸まって悲しそうだ。この後、神様の心を慰めるためにティラミスやアップルパイなどの甘味を出前した。
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