【番外編】フィラデルフィアサンド

「アメリカの肉を食いたい」


 ルイス狼が肉肉うるさい。


「食べたいものが決まっているの?」

「名前は忘れたけど薄切り肉と玉ねぎとチーズを挟んだやつ」


 それはもしかしてフィラデルフィア名物のフィリー(フィラデルフィア)チーズステーキサンドイッチのことかな。

 炒めた薄切りの牛肉と玉ねぎと溶けたチーズをホーギーロール(hoagie roll)という柔らかいコッペパンのようなパンで挟んだホットサンドだ。


「ちょっと待ってね…これのこと?」

 タブレットでフィリーチーズステーキの画像を検索して見せた。


「それだ!」

 後ろからタブレットを覗き込んできたルイス狼の頬毛がくすぐったい。


「じゃあ今日のご飯はフィリーチーズステーキにしようか」

「やった!」


「ホーギーロール(hoagie roll)を買うね」

 そのまま通販アプリを起動してパンとお肉を買う。玉ねぎは在庫があったので今日は買わない。


「…すごいパンだな」

「大量に入ったお得用しか売っていなかったんだよね」

 50個入りを買ってしまった。

ルイスもモニカもヨルも神様も沢山食べるけど50個は余るので残ったら時間停止のアイテムボックスに入れておこう。



 ピクルスとマッシュルームをも一緒に挟んで本家っぽく仕上げよう。サラダとフレンチフライもたっぷり添えよう。

 ルイスと一緒に準備をした。小さな私はサラダの担当。大人のルイスがフレンチフライを揚げた。


 全部を用意したらテーブルのホットプレートでルイスが仕上げるので神様たちを呼んだ。今日はアメリカっぽいメニューだからウィルコを招待した。


「嬉しいよ!本場っぽいね」


「今日は地球のお肉ね!」

「俺の好きなやつだ」

モニカもヨルもご機嫌だ。


「スープは出前でボストンから取り寄せたクラムチャウダーだよ。足りなかったら追加で取り寄せるね」

「ありがとうカレン」


「じゃあ作るぞ」


 ホットプレートで玉ねぎを飴色になるまで炒めたら、大量の薄切り肉をホットプレートに投入。ヘラで小さな肉片にほぐれるまで炒めたらスライスしたチーズを肉の上に載せる。

 横の方でトッピングのマッシュルームのスライスも炒めておく。

 チーズが溶けだしたら切り込みを入れておいたホーギーロール(hoagie roll)にたっぷり挟む。マッシュルームも挟んで完成。


「アメリカっぽい!」

ウィルコが大喜びだ。


「ウィルコ、飲み物もどうぞ」

 通販で取り寄せたアメリカのソフトドリンク各種をウィルコの目の前に置いた。

コーラ、ドクターペッパー、スプライト、A&Wルートビア、ペプシ。

「やった!今日はペプシにするよ」


「こっちはお酒ね!」

コロナ、ハイネケン、ミラー、クアーズ、バドワイザー。


「私はコロナにしようっと」

 フィリーチーズステーキを一口。美味しい…お肉とチーズが合うしパンもいい。

 そこにコロナをグイッと。合うー!フィリーチーズステーキにコロナが合うー!


「美味しー!」


ルイスと目があった。

「すっごく美味しいよ!」

「そうか!カレンと一緒に肉を食えるようになって嬉しいぞ」


「いやいや、離乳食の頃も愛らしかったぞ」

「そうね。ヨチヨチしてて可愛かったわ」

モニカとヨルの会話に嫌な予感がした。


「食事の途中で眠ることがあったな!」

「初めて見た時は驚いたわ。カレンに何かあったのかと思って…」

「ああいう時はカレンの乳母のマリアさんが頼りになったな!」


「赤ん坊らしくないイビキに驚いたこともあったぞ」

「魔物っぽかったわね」

「すごいイビキだったな」



 ルイスやモニカ、ヨルたちが赤ちゃんだった頃の私の恥ずかしい話で盛り上がり始め、

後半はお肉とビールを味わうどころじゃ無くなった。

 


 真っ赤になってうつむきながらシモンさんやテラ様のところにルイスやモニカの恥ずかしい話を聞きに行くと心に誓った。

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