第125話 南部の冬
「ルイスとモニカは、このくらいの気温はどう?」
今は12月の初旬、温暖な南部も冬だ。
「快適ね!」
「人間が肌寒いって感じるくらいが俺たちには丁度いいんだ」
ムルシア村を出発して、南部の村を順番に回るカレン一行、ルイスとモニカが元気で嬉しい。
「ここより南は暑い?」
「そうね、風の強い地域ならいいけど」
── 風が強くて体感温度が低く感じるシャウエンは気候的にはいいけど食べ物がヘルシー過ぎて合わないから行ってくれないだろうな…
「ハルミレ村は止めておいた方がよさそうだね」
「そうね、できれば避けたい地域だわ」
「とはいえ、その後が気になる地域だな」
「結界に戻ろうか?」
みんなで結界に戻り、アメリカのダイナーからコーヒーをポットで出前した。暖かいコーヒーが美味しい。アメリカかぶれなウィルコに甘そうなキーライムパイも取り寄せたら大喜びだ。早くジャンクなスイーツも作れるようにしようね。
「えっと今のハルミレ村は石鹸を行政が買い取りしているおかげで現金収入が増えて、村全体で鶏の飼育が盛んになってる」
「ほうほう!」
「鶏糞を飼料にする方法も伝えて、農業も変わってきてるよ。野生のローリエなんかをきちんと栽培して管理するようになってきてるし。石鹸の材料になるオリーブも計画的に増やそうと村全体が変わってきているよ」
ウィルコが良い感じに編集したハルミレ村の映像を結界のテレビに映してくれた。
「みんな楽しそうだね」
「希望を感じるな」
村人たちが以前とは別人のようだった。
「オリーブオイルが豊富な村だから唐揚げも伝えたんだよ、すごく喜ばれてね。唐揚げを食べるためにオリーブと鶏の世話をしているみたいなとこあるかな」
ウィルコが結界のテレビに映す映像が、村人が美味しそうに唐揚げを食べる映像に変わった。
── 村人たちの様子をみて確信した。
村人の優先順位は石鹸を差し置いてから揚げで間違いない。村の生活を良い方向に一変させた石鹸よりも唐揚げか…。
「から揚げが食いたい」
「そうね、今日は鶏肉の気分ね」
ルイスとモニカの食欲にスイッチが入った。
「じゃあから揚げにしようか」
「から揚げだけじゃ飽きるし胸やけするよ」
ウィルコは乗り気じゃなかった。
「うー・・・じゃあ、ジャークチキンも作ろうか、久しぶりに食べたいな」
「ジャークチキン?」
「ジャマイカっていうカリブ海の島国の料理でね、辛いんだけどスパイスがコク旨でハーブも効いてて美味しいんだ」
インターネット通販で鶏肉とジャークチキン用のスパイスを買う。スパイスを販売する専門店があって生前によく買っていたのだ。
鶏肉にライムのしぼり汁、玉ねぎのすりおろし、スパイスを揉み込む。2つに分けて、半分は普通のスパイス、もう半分は辛いスパイス。玉ねぎのすりおろしを揉み込むことでお肉が柔らかくなる。
「2~3時間置いてあとは表面がカリっとするまでオーブンで焼くだけ、その間にから揚げを作ろうよ」
モニカの目が光った。
「かしなさい、カレン」
2~3時間も待てないモニカが揉み揉みして、すぐに焼くことになった。神の力でよく浸かったようだ。
せめてもの抵抗でゴボウのから揚げも揚げた。あとは野菜たっぷり生春巻きとお味噌汁で野菜をとる。
「から揚げも美味しそうに揚がったね、ご飯にしようか」
「いただきまーす!」
ばくっと噛りつく…から揚げが美味しく揚がってる。どれジャークチキンも…こっちも美味しい。
「このチキン美味しいわね」
「ああ、焼いている時の匂いからたまらなかったな」
「豚肉でジャークポークにしても美味しいんだよ」
「次は豚肉で焼こうか」
ルイスとモニカとウィルコが沢山おかわりしてくれた。四人で食べるご飯は美味しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます