第126話 選挙前日の軽食
いよいよ明日は投票日だ。
今は午後四時、ウィルコとシモンさんが国内の投票所を見て回ってくれているが、そろそろ戻る頃だ。
「ただいまー」
「おかえりウィルコ、シモンさん」
2人のカップにアメリカのダイナーから出前したコーヒーを注ぐ。
「ありがとう」
「暖かいコーヒーは嬉しいですね」
12月なので外の世界は寒かっただろう。
「お昼は食べた?」
「軽く焚き火で干し肉とパンを炙って食べたよ」
「それだけ?」
「周りの旅人に合わせたんだよ」
野営地で休憩した場所に他の旅人がいては現実離れしたこともできない。
「食事ほど重くなさそうなものを出前しようか」
タブレットをポチポチしてアメリカっぽい軽食を取り寄せた。
「これは何?」
「ビスケット・アンド・グレイヴィー。アメリカ南部では朝食の定番。ソーセージをバターでそぼろ状に炒めて小麦粉をふってさらに炒めたら牛乳で伸ばしたホワイトグレイヴィーをカリッと焼いたビスケットにかけた料理。ビスケットは塩味のきいたスコーンとかソーダブレッドみたいなものだよ」
このビスケットは日本人がイメージするビスケットとは違うお食事系のビスケットだ。フライドチキンチェーンのビスケットをイメージすると近いかも。
「軽くもないけどアメリカっぽくてウィルコが好きかなって」
「美味しそう!」
「これはどっしりして食べ応えありますね」
シモンさんも気に入ったみたい。
「俺たちはソーセージ多めで」
ルイスとモニカも食べる?お昼もたくさん食べてたけど夕飯に響かない?大丈夫ですか、はいはい。
「やっぱりクリーム系は美味いな!」
ルイスはホワイトソース系の味付けが好きなので嬉しそうだ。
「ソーセージを足してくれたのね、嬉しいわ」
モニカもソーセージ多めのオーダーが通って嬉しそう。
「投票所の様子はどうだった?」
食事がひと段落するころ、4人のカップにコーヒーを注ぎながら質問した。
「問題ないよ、選挙管理委員に任命した人たちも明日は朝から投票所に詰めて選挙を見守る気力充分」
「朝7時から投票開始、17時には終了して開票します」
「明日は朝が早いから今日は早めに休もうね」
「じゃあ夕飯は早めに食おう」
「そうね、栄養をつけましょう」
こってりしたビスケット・アンド・グレイヴィーを無かったかのように夕飯の相談で盛り上がる神々。
…つーか神さまって栄養が必要なのかな?肉を食べる理由を見つけてラッキーって顔してたような…。
神々の相談によって夕飯のメニューは焼肉に決まった。
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