第117話 荒ぶるカレンを鎮めるレバニラ
「公務員が増えたね」
「うん、もうすぐ懲役を終える人達には第一次産業への就職をすすめたいな」
第一次産業とは農業、林業、鉱業、漁業(水産業)が含まれる。
第二次産業は、第一次産業が採取・生産した原材料を加工して富を作り出す産業が分類される。製造業、建設業、鉱業など。
第三次産業は、第一次産業にも第二次産業にも分類されない産業が分類される。小売業やサービス業など。
今は教育関連の公務員採用が進んでいるが、この数ヶ月でだいぶ公務員が増えた。寿命も伸びるはずだし出生率も上がるはずだから第一次産業に従事する層を厚くしたい。
「カレンが選挙で立候補者に第一次産業の保護政策について発表させた理由が分かるよ」
いつになくウィルコが真剣だ。
「立候補者のソニアさんもユセフさんも第一次産業の重要性を理解してくれてるみたいで良かったね」
「僕も同感。最初のリーダーがあの2人から選ばれることになったのは本当にラッキーだと思う」
ソニアさんの保護政策もユセフさんの保護政策も8割くらい被ってて、ソニアさんもユセフさんもお互いの政策で自分に欠けていた点は全面的に取り入れたいと早々に表明してた。あの柔軟性、ライバルの意見を受け入れる懐の深さに感動したんだ。
アメリカ大統領選挙の報道なんかで、見るのが辛くなるディスり合いがあるけど、ソニアさんとユセフさんの選挙にはスポーツマンシップのようなものを感じる。
自分のキャリアを振り返って残念で泣いた。部下の提案を認めないクソ上司が勝手に自分のアイディアとしてパクって発表したりしてて何度か殺しかけたから。妄想の中でなら30回…いや200回以上、拷問して切り刻んで惨殺したわ。
そんな会社も身売りで崩壊、私のキャリアも終了したんだった…。あのクソ上司のザマアを見たかったのに私まで無職になっちゃったよ。
「カ、カレン?…カレン?」
「ん?何?」
「なんだか凄く怖い顔してたよ」
──殺人鬼のような表情にもなるわ…
「カレン?しっかりして!」
「…………こういう時は…レバニラ…」
「ればにら?」
鉄分といえばレバー。レバーといえば鉄分。鉄の不足はイライラの原因になるのだ。イライラを落ち着かせるセロトニンの生成を助けてくれる鉄分や亜鉛を多く含むレバーを食べてリセットしよう。
今日はお風呂にとっておきの温泉の素も入れよう。ルイスとモニカもモフらなきゃ。
「今日のご飯はレバニラがいい!」
「唐突だね」
「…こんな日もあるのよ」
「そっか。他に何を作る?」
街中華の献立で思いつくのは…レバニラに合う卵炒飯、中華といえば餃子、よだれ鶏、五目あんかけ焼きそば、麻婆豆腐、回鍋肉、酢豚、焼売、八宝菜、エビチリ…。
「レバニラに合うのは卵炒飯だよね!」
「いいね!」
炭水化物ラバーなウィルコは大賛成だ。
「アイテムボックスの自家製チャーシューも出そう」
「いいな!」
ルイスとモニカも大喜びだ。でも2人にはこれだけじゃ肉が足りない。
卵炒飯と水餃子を作って、レバニラは美味しいと評判のお店から出前することにした。野菜は回鍋肉と青椒肉絲の出前で補う。
「水餃子はアイテムボックスの作り置きを利用して、食べ方を工夫しようか」
火鍋っぽく基本の中華スープで煮込むのと、辛いスープで煮込むのとスープは2種類用意しよう。スープで煮るけど韮醬も用意しよう、韮かぶりだけどウィルコが水餃子で白いご飯を食べたそうだから。本当に炭水化物が好きだな。
みじん切りの生姜とニンニク、醤油、お酒、味醂、黒酢、ごま油を一煮立ちさせている間に手早く韮を刻んで混ぜたら韮醬の完成。
「カレン、水餃子と卵炒飯の準備が出来たよ」
「じゃあ出前を頼むね、一皿目は豚レバーが揚げ焼きにされた美味しいお店」
すぐに現れた。
「二皿目は、大きめにカットされた牛レバーがゴロゴロ入っているお店、ここは濃厚なタレが美味しいんだよね」
大盛りで頼んだがすぐに現れた。
「三皿目は鶏レバーを使ったレバニラ。ここの鶏のレバーは臭みがなくて美味しいんだ」
こちらも大盛りで頼んだ。
「じゃ、ご飯にしようか!」
テーブルの真ん中に水餃子を煮込む火鍋、卵炒飯と自家製チャーシューの大皿、出前のレバニラと青椒肉絲と回鍋肉。ウィルコが土鍋で炊いた白いご飯。
「いただきまーす」
私はレバニラから!
…美味しい……違うお店のレバニラを同時に味わえるって最高!
「こういう食べ方があるんだな」
「そうね、レバーって好きじゃなかったけど美味しいのね」
「ルイスやモニカの世界ではレバーを食べないの?」
「そうね、ほとんど食べなかったわ」
「好奇心で手を出して二度と食わないって感じだな」
生で食べると食中毒を起こすからかな?臭みがあると美味しく無いし、新鮮じゃないとアレだしね。
「地球でも頻繁に食べるものじゃ無いけど、たまに食べると美味しいんだよね」
「ご飯にあうね、美味しいよ」
ウィルコは白いご飯が進んでいる。
「回鍋肉と青椒肉絲もご飯に合うよ」
「食べる!」
「そろそろ水餃子もいいかな、ウィルコは韮醬をつけてどうぞ、このタレで食べるとご飯のおかずになるから。モニカは辛いスープで煮た水餃子が好きそう」
私も辛いスープの方をいただこうっと。
熱っ!…はふはふ……
「どうやって食べても餃子は美味いな!」
「この辛いスープと合うわね!」
ルイスとモニカも気に入ったみたい。
「このタレ美味しいね。ご飯が進むよ」
ウィルコは水餃子と韮醬で白いご飯を食べている。本当に炭水化物が好きだな。
「カレンは水餃子?回鍋肉?」
「水餃子!」
「辛いのにする?」
「うん、ありがと」
私の手が届かないことに気づいたモニカが水餃子を取り分けてくれた。
「俺はチャーシュー丼にするぞ、姉ちゃんも食うだろ?」
「もちろんよ」
「ウィルコは?」
「食べる!」
「カレン?」
「少しだけ!」
「任せろ」
ルイスが全員の丼を仕上げてくれた。
みんなで美味しいご飯を食べて、ささくれていた気持ちが落ち着いた。
明日も頑張ろう。
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