第116話 教育制度の公布とうどん
農業の季節が過ぎたので、ずっと気になっていた教育制度を本格的に整えたい。
「絵本?」
「うん。幼馴染みの男の子と女の子のグループが教育の大切さを学びながら成長して安定した職について幸せに暮らす話と、大人が働きながら学び直してキャリアップする話」
これを夢で全国民に神託で見せてから制度を告知したい。
絵本はインターネット通販で発注した。データで納品されたのでカラーでプリントアウトして全員に配る。
「よく出来ているじゃない」
「分かりやすいな」
「新しく教育関連の公務員を採用するよ。教師と事務・管理系ね」
教育は義務教育的なものから実務系、教養系まで幅広く揃えた。多くの人に利用してもらえるようにレベルも細かく設定した。
働きながら勉強するのって大変だから短い期間である程度の学びを得られれば利用してもらえるしね。多くの人にたくさん、何度でも利用してほしい。就職に繋がらなくても生活に役立つこともあるだろうし、異業種で役立つこともあるだろう。
義務教育以外は有料にした。無料にすると真剣じゃない人も呼び寄せてしまうから。
あらゆる世代の学びたい意欲に応えることは出来ない。理由は圧倒的に教師が不足しているから。学びたい分野は役所にリクエスト出来る。それを集計して実現させるのも、学習後の就職サポートも事務・管理系の仕事になる。
「義務教育は6歳から10歳までを想定してる。これまで通り家の手伝いができるよう1日あたりの授業時間は短くする」
年齢設定はドイツの教育制度Grundschule(グルンドシューレ)をパクった。ドイツは6歳から10歳までの4年間が基礎学校。5年生になる10歳で、エリートコースか就職コースか専門職コースかの3択を迫られる。10歳の決断で将来が決まってしまうって厳しいよね。
エリートコースは狭き門な上に進めたとしても成績によっては留年や別なコースへの移動もあるらしい。ドイツ厳しい…。
この世界はまだ発展途上で学べることも多くないし平均寿命も短いので義務教育も短めにした。代わり実務や教養の科目を増やした。
発展するに従って実務が専門教育になっていくのでスタートはこれでいい。いずれ医療の実務が医学に発展するだろう。
「この絵本の内容を夢で見させればいいんだね」
「うん、出来そう?」
「大丈夫」
「そしたら次に制度の告知だね」
「まずは公務員を募集、採用された公務員が実務について体制を整えたら制度の開始。開始時期は先にこっちで決めちゃうよ。採用から3ヶ月後に義務教育スタート、その半年後に実務と教養がスタート。最初はこの準備期間で出来るところからスタート」
「冬の間に基本的な読み書きと計算の学び直しを推奨しておくね」
「いいね!」
スタートはこんなものだ。この世界の住人たちの手で発展させてもらいたいので、私たちはやり過ぎない。決め過ぎない。
「カレン、神託の前に腹ごしらえしたいな」
「そろそろご飯の時間だね、何か食べたいものある?」
「うどん!」
うどん?アメリカかぶれなウィルコが珍しいな…。
「カレンのタブレットで見たツルツルトンを出前して欲しいな」
あれか!けっこう好きでよく食べに行ってたお店だよ、明太子クリームのおうどんが好きだったな。
「じゃあメニューを出すね」
ウィルコとルイスとモニカが真剣にタブレットを見つめる。
「どれもいいわね」
「俺はクリーム系を頼むぞ」
「僕は一杯目は大判キツネのおうどん!」
すぐに来た、テーブルの上に大きな器が揃って湯気を立てている。
「いただきまーす!」
ウィルコが勢いよく麺をすすってレンゲで出汁を飲む。
「美味しい!」
期待通りだったみたい、良かったね!
ルイスはチキンクリームおうどん、モニカは季節のメニューからホルモンチゲおうどん。クリーム系が好きなルイスと辛いもの好きなモニカらしいチョイスだ。
私は量を食べられないから、じっくり選ぼう。季節のメニューもいいな…。
「3人とも早いね」
全員出汁まで全部飲み干してる。
「モニカは次はカツカレーのおうどんにしたら?好きそうだよ」
「ちょっと見せて…いいわね。でもエビフライと牛スジとカツが乗ってるカレーうどんもあるじゃない」
「姉ちゃん、ベーコンカルボナーラおうどんもあるぜ…」
「僕は釜揚げと、しらすおろし乗せ
ウィルコは一気に2人前ね。ルイスとモニカも決まった?はいはい。
再びテーブルに大きな器が並んだ。私は季節の限定から海鮮石焼うどんにした。ベーシックなおうどんは自炊で食べられるから、このお店では捻ったメニューを食べたい。
ずぞぞぞぞー。
うん、美味しい。何を食べても外れ無しだよね、今日も美味しい〜!
「カレン、おかわり!」
はいはい。
うどんを食べて満たされたウィルコによって全国民に神託が下された。いつになく鮮明でエンタメ性に溢れる神託だったと国民の間で評判になった。
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