第115話 世界三大ハム
世界3大ハムと呼ばれる3種類のハムが揃った。
「ルイスもモニカも人型に戻ってね」
「何からやる?」
ルイスがやる気だ。
「まずは味見かしら?」
モニカの気持ちは分かる。
「全部出して台に固定したら食べてみようか」
ルイスとモニカがテキパキ動いた。
「このくらいでいいか?」
ルイスが全員分を切り出した。
「美味しそうだね」
ウィルコも嬉しそうだ。こういうのって楽しくてウキウキするよね。
「プロシュット・ディ・パルマもしっとりしてて美味しいね」
「僕も両方好き」
私とウィルコはどっちも気に入った…というか美味しいよ!当然美味しいよ!
ハモン・セラーノは皮の一部をはいでから塩漬け。プロシュットは皮を残したまま塩漬けにしている。コクと塩気を強く感じるのはハモンセラーノで、プロシュットはしっとりとした食感が特徴だと思う。でも似てるよね。生ハムは生ハムだもん。
「俺はハモン・セラーノの方が…いや、プロシュット・ディ・パルマも文句なしに美味い」
「分かるわ…優劣つけられないわ…」
ルイスとモニカの1番美味しい論争がまたしても迷宮入りした。
「金華ハムも切ってみようよ」
「カレンの言うとおり塩っけが強いな」
「でも旨味は凄いわ」
ルイスもモニカも塩気が気になるようだ。
「古い方のハモン・セラーノから調理しようよ、残っているハムを具にしてリゾット!骨で出汁を取ろうよ」
骨にハムを残して煮ると塩気が強すぎるスープになってしまうのでルイスが綺麗に骨と肉を分離した。
── 凄いよ…私が生前に1人でバラした時は大工仕事みたいだったのに。さすが神の力を食欲以外に使わない男だよ。骨はモニカが10cmずつにカットしてくれた。なんていうか…骨がカマボコみたいにスッと切れた。
モニカも神の力を食欲以外に使わない。似たもの姉弟だ。
1番大きなお鍋に骨とお水、青ネギ、生姜、ローリエを入れて丁寧に煮込んで美味しいスープが出来た。これでウィルコと一緒にリゾットを作るよ!
「リゾットを作る時、お米は洗わないんだよ」
「どうして?」
「米を洗うと水分を吸収しやすくなって粘りが出てしまうから。生米から作るんだよ」
玉ねぎのみじん切りとカットしたハモン・セラーノをオリーブオイルで炒めるよ、同時にスープも温め直してね。玉ねぎに火が通ったらお米を入れてよく炒める。お米が透き通るまで炒めたら熱々のスープをお玉一杯加える。スープが熱々じゃないとお米に粘りが出るから注意してね。
混ぜすぎないように気をつけながらスープを加えていって、米に芯がなくなってアルデンテになったら火を止める。味見して塩味が足りなかったら塩胡椒で整えるんだけど塩気は充分だよね。
熱々をアイテムボックスにしまった。
「次は金華ハムの炒飯ね!」
中華鍋に油をひいて溶いた卵をジュワッと温めてご飯を投入。ウィルコが中華鍋を煽ると卵とご飯が華麗に舞う。
そこにカットした金華ハムを加えて煽る。金華ハムに塩分が強いので入れすぎると美味しくないと伝えたらルイスとモニカが静かになった。
金華ハムの塩分が全体に回ったらネギを加えて炒めて完成。金華ハム頼みの一皿だ。
「ご飯にしよう!」
テーブルにはルイスとモニカが切り出したハモン・セラーノとプロシュット・ディ・パルマが山盛りだった。そこに熱々のリゾットと出来立ての炒飯を出す。スープは炒飯に寄せてインスタントのフカヒレ、緑のパッケージのインスタントのやつ美味しいよね。
テーブルの真ん中にホットプレートを出して作り置きの餃子も焼くよ!
「いただきまーす!」
まずはリゾットから…美味しい。味見したから知ってるけど、やっぱり美味しい。次は金華ハムの炒飯…これも美味しい。
「どっちも美味しいね!」
「ウィルコは炭水化物が好きだもんね、気に入ってもらえると思ったよ、そろそろ餃子が焼けたかな」
ルイスとモニカとウィルコに餃子を配る。
「餃子も美味しいわね!」
「でもやっぱり今日の1番はハムだな!」
「ええ…でも私は1番は決められないわ」
「それは確かに…リゾットも炒飯も美味すぎるんだ…」
ルイスとモニカが揃ってため息をつく。今日二度めの迷宮入りだ。
3人が嬉しそうだと私も嬉しい。
今日は野菜の副菜がないが良いのだ。この餃子は野菜多めで作ったから。
これは野菜…これは野菜…餃子を食べながら自分に言い聞かせた。
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