第228話 モッツァレラ・チーズ
「なあ、この村で水牛はどんな風に利用しているんだ?」
「ミルクを絞って飲んだりバターにしたり」
「肉も美味いな」
「チーズは作っていないのか?」
「チーズ?」
無いみたいだ。
「水牛のモッツァレラ・チーズは出来立てが美味しいから買い取りは出来ないけど、作ればこの村で食べることは出来るぞ」
「出来立ては美味しいわよ」
「作り方は教えるよ」
「もっつ…なんとかってバターみたいなものか?」
「興味あるわ」
「教えてもらっていいか?」
紅茶のパウンドケーキを気に入った村人たちの期待値が上がっており、一緒に作ることになった。
「大きな鍋でお湯を沸かしながら、別の鍋で水牛の乳を50℃から60℃くらいまで温めるぞ」
「50℃?」
「60℃?」
「50℃から60℃の見た目はこんな感じだ。雰囲気で察しろ」
ルイスが無茶を言った。
「指をつけると熱いけど沸騰には遠い温度だよ」
「温度を上げ過ぎるとカッテージチーズになるわ。カッテージチーズもそれなりに美味しいわよ」
「50℃から60℃くらいまで温まったらお酢を入れて、ゆっくり混ぜると分離して固形分と水分に分かれて固形分がまとまってくる」
ルイスが木べらで混ぜるとモチモチした固まりが出来てきた。
「この分離した固形物の方をカードと呼ぶ。水分はホエーだ」
村人たちの牛乳もきれいに分離したが、分離したカードとホエーを見る村人たちの顔が不安そうだ。確かにこの時点では美味しそうに見えない。
「寝かせたら目の細かいザルでホエーを切ってカードを絞って1つにまとめて別のボウルに移し、そこに熱湯を注いでこねる」
捏ねると滑らかになってくる。プロは手で捏ねるようだが私たちは熱くて無理なのでルイスは両手に木べらを持ってこねこねしている。
温めては揉むを繰り返すと粘りや弾力がでてくる。温度が低いとモチモチしない。
「すべすべになって弾力が出てきたら水に漬けて冷やす」
現代だったら氷水に浸けるところだけど、ここでは冷たい井戸水だ。
「冷えたら塩水に漬ける。モッツァレラ・チーズに塩味が付いたら完成だ」
出来上がったモッツァレラ・チーズをカットしてオリーブオイルと塩を振って試食した。
「美味しいな!」
「ミルクっぽいのにミルクよりコクがあるな」
手作りモッツァレラ・チーズは好評だった。
「モッツァレラ・チーズは焼いても美味いぞ。さあ残ったホエーで作ったクリームシチューとモッツァレラ・チーズを乗せて焼いたパンも試食してくれ」
ホエーで作るクリームシチューはルイスの好物だ。村人たちからモッツァレラ・チーズ以上に高評価でルイスの胸が反り返った。
ウィルコが紅茶やパームシュガーも忘れないでと念を押して村を離れた。
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