第235話 わがままモニちゃん

 ルイスに抱っこされたモニちゃんと向かい合って右前脚を左手で、左前脚を右手で握る。



「モニカ、治療を受けて欲しいよ。このままじゃモニカが苦しそうで見ていられないよ」

「…いくら可愛いカレンの頼みでも聞けない事があるのよ」


── ダメだこりゃ。


 手を繋いだままモニカの頭にスリスリする。スリスリしながらシモンさんと目を合わせる。


── 私が気を引いているうちにブスっとよろしく!


── な!バレたら嫌われるじゃありませんか!


── バレないように打てや。


── 嫌ですよ!


── モニカが苦しそうにしてるの、見ていられるの?


── 仕方ないですね…


 腹を決めたシモンさんは手際が良かった。気配を消してサッとモニカの首の後ろに打ち込んでチュウっと注射した。打った後、注射器を隠すようにしまうのも早かった。



 モニカと手を繋いだまま優しく語りかけてみた。

「モニカ、じゃあ後でお薬を飲めるように頑張ってみようか?」


「モニ、お薬飲まない」

モニちゃんがプイっとした。



「姉ちゃん…」

 涙目のルイスが小さなモニカに治療を受けて欲しいと目で訴えるが ─すうっとモニカが目をそらした。


 ルイスが小児インフルエンザに感染した時に嫌がるルイスを前脚で踏んで注射を受けさせたことを後ろめたく思う気持ちはあるようだ。



「ルイス、ここを整えたから」

 ウィルコがリビングの日当たりの良い場所にルイスが横になれる場所を作ってくれていた。


「すまねえウィルコ」

 モニちゃんを抱いたルイスが移動して狼化してモニちゃんを抱き込むとモニちゃんが眠った。


「そういえば昨日の夜の姉ちゃんはいつもより食欲が無かったんだ…」

 ルイス狼がめそめそと何かを思いだしたようだが、大きなモニちゃんはいつも通りたくさん食べていたと思う。


「いつもなら、あと二口は食ってた…」



 想像よりずっと微妙な差だったし、それが分かるのは仲良し姉弟だからだな…というか誤差だ。それは食欲が無いとは言わない。

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