第210話 鴨すき鍋
「ルイスが元に戻って良かった…」
大きなルイス狼にモフっと抱きつくとペロっとされた。
「心配かけたな」
ウィルコもルイス狼をモフっている。ウィルコも心配していたもんね、元通り大きなモフモフになって嬉しそうだ。
東へ向かう途中で寝込んでしまったが、もう2〜3日休んで旅を再開することになった。
「ルイスを治療してくれてありがとうシモンさん」
「…私も心配していたんですよ」
治療法は乱暴だったけど良くなってきたタイミングですぐに来てくれたもの、気にしてくれていたんだなって分かる。
「シモンもご飯を食べていってよ、カレンが鴨すき鍋を取り寄せてくれたから」
「鴨はいいですね」
「準備は出来ているよ、回復期のルイスはたくさん食べて!」
ウィルコがテキパキ仕切って鍋が始まった。
鴨肉・ねぎ・出汁用昆布・特製だしのセットを取り寄せて追加の長ネギも買ったし鴨肉もロースの薄切りを多めに買った。
「鴨肉って見た目にも綺麗よね」
「鴨肉は美容にもいいんだって」
「それは嬉しいわね」
モニカには必要無さそうだけど。
「今日は長ネギと鴨肉のお鍋だよ、鴨肉の油を焼いて油が出てきたらネギを焼くよ。長ネギに焼き目がついたら出汁を入れて煮込むよ」
ウィルコ奉行が長ネギを焼いて出汁を注ぐ。
「鴨肉を入れていくよ。鴨肉は長ネギの上、出汁に沈めない。これで火が入りすぎるのを防げるから」
ウィルコ奉行が鴨肉を長ネギに乗せてフタをする。モニカとルイスがそわそわし始めた。
「もういいかな」
1分ほどでフタを開けるとピンク色でちょっとレアな鴨肉がお鍋いっぱいに広がっていた。
「さあ食べよう!」
ルイスとモニカとシモンさんが鍋に箸を伸ばす。
「美味い!」
「鴨って味が濃くて美味しいわね」
「野生味があって食べ応えありますね」
3人とも気に入ったみたい、私もいただこう。
── うん美味しい!出汁が蕎麦つゆっぽくて好きな味。ちょっとレアな鴨肉は、しっとり柔らかい。新鮮なお肉だから臭みは一切感じないな。
美味しい〜!焼き目をつけた長ネギも香ばしいな、でも長ネギは煮込んだ方が美味しいから、まずはお肉だな。
ルイスとモニカとシモンさんが鴨肉をもりもり食べている。ウィルコも鍋を仕切りながら美味しいタイミングで食べているようだ。
これは4人とも気に入ってくれたってことだよね。
「薬味も試してね、ゆずこしょう、七味、カボスを用意したから」
この薬味は何度か食べにいった人気店を真似した。
「カボスって美味いな」
「私は七味がいいわ」
「ゆずこしょうって上品ですね」
みんなの食べっぷりを見ていたら炊飯器がピーピー鳴った。
「鴨めしが炊けたよ!」
さっそくお茶碗…じゃなくて丼によそって配ると、鴨めしも好評だった。私は子供用の小さなお茶碗。
「鴨肉もつみれもほとんど食べたね」
「美味かった!」
ルイスの食欲が元通りだ。
「じゃあ、〆るよ!」
もちろん〆は鴨南蛮そばだ。
鴨の脂がにじんで出汁が虹色に輝いているし、クタクタの長ネギは鴨の出汁が染みて最高だ。
全体にあっさりだけど野生味があって濃厚な鴨肉にルイスが満足してくれて良かった。
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