【番外編】獣口病
「今日は食欲がないの」
「カレンちゃんは少食だから心配だよ」
ご飯を食べたくないと伝えたら神様の心配性が発動した。
「子供なら普通だよ。今日は昨日の焼肉で胃がもたれているみたい」
ルイスとモニカにつられて昨日は食べ過ぎた。
「それならいいんだけど…」
「後でお腹が空いたら何か食べるね」
自分は今日の昼食をスキップするけどルイスたちはお腹いっぱい食べてと伝えて自分の部屋に戻る。
── ちょっと眠いな。お昼寝しよう。
小狼になって子供用ベッドの上で丸くなると、すぐに眠気がやってきた。
2〜3時間眠って目が覚めたらルイスが添い寝してくれていた。ルイスの匂いが近くにあると安心して眠れる。
ルイスは面倒がらずに、いつも私を視界に入れて必要な時は世話をやいてくれる。頻繁に私を落っことすけど良い父ちゃんだと思う。
甘えたい気分だし、まだ眠り足りないので寝返りをうってルイスの毛皮にモフッと埋もれて寝直した。
……目が覚めたけど起きるのが億劫だ。でも喉が渇いたな。冷たいお水を飲みたい。
くわあ…と欠伸をして起きる。半分くらいしか目が開かない。
「起きたのか?」
ルイスだ。私が安心して眠れるよう、ずっと寄り添っていてくれたのだ。
「わうわう」
…あれ?お水を飲むって言ったはずなのに。
「わうわう!」
── どうして喋れないの!?
「きゃん!」
── やっぱり喋れない!
慌てても解決しないから…そうだ!人型に変化すれば大丈夫!えい!
── あれ?………えいっ!
「きゃん!」
── 人型になれない!それにやっぱり喋れない……どうしよう…じわじわ涙が出てきた。
「カレン、もしかして喋れないのか?」
「わう!」
── ルイスが分かってくれた!
「人型に変化も出来ないんだな?」
「わうわう!」
── そうだよ!さすがルイス!
「
── 何その
「獣化出来る神族がかかる感染症だ。症状は食欲減退、発熱、人型に変化できない、喋れない、野生に近づく」
── 人間の手足口病とだいぶ違うな。手足口病は発熱して小さな水ぶくれが出来るウイルス感染症だったはず。野生化ってなんだ。
「どれ?」
ルイス狼が額をくっつけてきた。
「少し体温が高いな。喉が渇いただろう?」
「わうわう!」
── そうそう!さすがルイス。
人型になったルイスが私を抱いてリビングに向かう。病気の私を落っことさないよう気をつかってくれたのかな…普段からその気遣いを頼むよ。
「カレンちゃん、起きたの?」
リビングで神様がモニカ狼をモフっていた。ヨルはモニカ狼に寄り添っている。
「父ちゃん、カレンが獣口病だ」
「…ええっ!だから食欲が無かったんだね。お熱は?」
「少し体温が高い」
「カレンちゃん…」
心配そうな神様に抱き寄せられた。
「わうー」
「父ちゃん、水だ。カレンが飲みたがっている」
冷たいお水を飲ませてもらって落ち着いたし、なぜ喋れないのか原因が分かって安心した。
「わうわう!」
── さっさと治療してくれ。早く治って
「カレンちゃん、注射するよ」
神様が注射器を持って宣言した。
青ざめたルイス狼とモニカ狼が挙動不審だ。注射器を見るだけでソワソワするらしい。
「わうわう!」
── さっさとやってくれ。
頼まれてもいない“お手”をして前脚を差し出すと注射は一瞬で終わった。
「わうー」
── 神様、ありがとうー。
ルイス狼とモニカ狼を見たら、震えながらギュッと目を瞑っていた。
注射はもう終わったよ!
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