【番外編】獣口病 2
「わうわう」
── 怠いから横になりたい。
「カレンは休んだ方がいい。水はもういいか?」
「わう」
肯いて同意を示した。
「腹は減っていないか?何か食うか?」
「わうー」
首を振って何も食べたくないと伝えると、ルイス狼が私の
私をベッドの上に置くとルイス狼も隣で横になったので転がってルイス狼に密着した。甘えたい気分なのだ。
「ルイス君に甘えるカレンちゃんは可愛いねえ」
「ずっと側にいるから安心していいぞ」
「くぅ」
甘えた声が出た。神様の鼻息が荒い。モニカ狼とヨルにも、めっちゃ見られている。そんな状態でも眠れてしまった。
数時間で目が覚めた。もぞもぞ動くとルイスが気づいてくれた。
「起きるか?」
「わうー」
── 起きる。
ルイス狼に頸を咥えられて運ばれた。リビングには神様とモニカ狼、ヨル、ウィルコがいた。
「わう!」
── ウィルコ!
「具合が悪いって聞いてカレンの好きな茶碗蒸しを作って持ってきたんだよ」
「わうわうー」
── ありがとウィルコー
犬用のお皿っぽい食器に茶碗蒸しを出してくれた。プリンみたいだ。
「わうわうー」
── いただきまーす
うまー、茶碗蒸しうまー!
食欲なかったけどお腹に優しいからスルスル入る。
── お腹いっぱい。満足だ。
ルイスの横に歩いて行ってころりと転がって密着する。
「お腹ぽっこりなカレンちゃんも可愛いねえ」
神様がデレ顔だ。
── 小狼の生活に慣れたら自立した大人の生活に戻れなくなりそうだ。
このままじゃいけないと考えつつ、ふにゃふにゃ言ってルイス狼に甘えてしまう。
「ちょっとトイレに行ってくる」
眠りそうなタイミングで密着していたルイス狼が立ち上がった。
「がうがう!」
考えるより先に吠えてしまった。ルイス狼が離れるのは受け入れられない。
「すぐ戻るから」
「がうがう!」
「カレン、いい子だから俺とモニカと一緒に待っていよう。な?」
「そうよ、私たちと一緒ならいいわよね」
「わうー…」
ヨルもモニカも大好きだけど良くない。キュンキュン鳴いてぐずった。
「カ、カレン…」
青ざめて内股のルイスがもじもじしている。
「ルイス君は行っておいで」
ルイスを送り出した神様が私を抱き上げた。
「大丈夫、ルイス君はカレンちゃんを置いて行かないから」
「そうよ、私と一緒に寝ましょう」
モニカ狼が自分の横をボスボス叩く。
モニカ狼の横に寝かされたものの気持ちが落ち着かず、ソワソワする。
ドスドス地響きがすると思ったらルイス狼が走って戻ってきた。
「わうー!」
「すまんすまん」
慌てて戻ったルイス狼に抗議すると私の横に寝転がったので思いっきり体当たりして密着して寝た。
獣口病の症状の発熱はあったけれど野生化は発症しなかった。しかし病気の間、私はわがままな甘えっ子だった。
「ひゅう〜ん…きゅう〜ん…くぉ〜ん!」
ルイス狼が離れるとぐずって鳴いた。
1秒も我慢しなかった。その度にルイス狼が焦って戻ってきた。
「ひゃいん!ひゃいん!ひゃいん!」
ルイス狼がトイレに行くと毎回くっついていってドアのすぐ外で鳴いた。ルイス狼が便秘になったのは私が鳴いてぐずったせいかもしれない。
1人になれる時間を持てず、いっときも気の休まらないルイス狼を心配したモニカ狼とヨルが自分たちと一緒に休もうと誘ってきた。
「カレン、私たちと一緒に休みましょう」
「俺たちの真ん中がカレンだ」
「キュオォォ…」
聞き分けない子供の私は鳴いて抵抗した。
「パパ、カレンはなんて言っているのかかしら?」
「モニカちゃんとヨルのことも大好きだけどダメだって。ルイス君もいないと絶対にダメって…」
モニカもヨルも大好きだけど、そこにルイス狼も居なきゃダメだ。
私が理性を失い小狼っぽく我儘にふるまっていたら、わずか1週間でルイス狼はやつれてしまった。目の下に隈が出来て毛皮もパサパサして艶がない。
「子育てって大変なんだな…」
私に添い寝しながらルイス狼が遠い目でつぶやいて、『手が掛かるけど可愛い』と言ってペロペロされた。
発症から2週間ほどで私は理性を取り戻して話せるようになり、人型に変化も出来るようになった。その途端に安心したルイス狼が過労で寝込んでしまった。ごめん…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます