第92話 夏バテご飯と自家製チャーシュー

 ムルシア村から離れて見えなくなったら転移で結界に戻った。

 ルイスとモニカには涼んでもらってウィルコと2人で馬の世話をした。


「やっぱり我が家が1番ね」

ルイスとモニカが狼化してゴロゴロしてる。



「今日は夏バテでも美味しく食べられるご飯にしようか、ウィルコも手伝って」

「何を作るの?」

「冷やし中華とバンバンジーと自家製のチャーシュー!」

 ルイス狼とモニカ狼がピクッとして尻尾を振る。

「たくさん食べて力をつけてね!」

「カレンは良い子ね」

「豚肉はいいな!」

ルイスとモニカが元気になってきた。



「まずはチャーシューの準備から始めよう。豚肉を買うね」

 インターネット通販で豚肉の塊をたくさん買った。肩ロースとかバラ肉とか。


「肉を漬け込む醤油ダレは多めに用意しようね」

 醤油を一斗缶で買うのは初めてだな。18リットルだよ。あとは日本酒と生姜と長ネギの青い部分をたくさん使う。


「みりんは?」

「みりんを入れるとお肉が固くなるって聞いたことがあるから入れないんだ。無くても美味しいから大丈夫」


「豚肉の表面を強めの中火で焼くよ。転がして全体に焼き目をつけてね。別のお鍋に醤油と日本酒とスライスした生姜と適当にカットした長ネギの青い部分を入れて温める。そこに焼いた豚肉を油ごと入れて煮る。沸騰したら弱火ね、1時間煮込むよ」

「意外と簡単なんだね」

「うん、手軽なのにご馳走だよね」


「次はバンバンジー、皮を取り除いた胸肉をお酒と長ネギの青い部分と塩で灰汁を取りながら茹でる。キュウリは千切り、トマトは薄切り。砂糖、お酢、醤油、白ねりごま、ネギのみじん切りでタレを作るよ」

 ウィルコが手際よく調理する。

「茹でたお肉が冷めたらお肉の繊維に沿って手で細く裂く。トマトとキュウリを盛り付けた上にお肉を乗せて完成。これは食べる時まで冷やしておこう」


「チャーシューが煮えたね。火を止めて10分くらい放置ね、冷める間に肉に味が染み込むよ。チャーシューを取り出した醤油ダレは生姜とネギを取り出して保存ね。またチャーシューを作るときに使えるよ、継ぎ足しながら作ると美味しくなるからまた作ろうね」

「あれ、全部しまわないの?」


 チャーシューを煮た醤油ダレを小鍋に取り分けたことにウィルコが気付いた。

「少し砂糖を足して火にかけてトロッとさせるよ、これがチャーシュー丼のタレね」

「じゃあ僕はご飯を炊くよ」

 ウィルコは気が利いている。その間に私は冷やし中華のタレを作ろう。


「醬油、酢、みりんを火にかけて沸いたら火から下ろして砂糖と水を加えて混ぜたら生姜のしぼり汁を加えて混ぜる。最後にごま油を加えて完成」


「カレン、手伝うよ」

「じゃあキュウリを千切りにして。薄焼き卵もね、トマトはくし切りね。私はエビをボイルしてチャーシューを細く切るね」

 さっき作ったチャーシューを冷やし中華にも使う。

 沸いた湯の中にほぐした中華麺を入れて、箸でほぐしながら茹でる。再沸騰したら火を少し弱めて、茹で上がったらザルにあげて流水で冷ます。中華麺の粗熱が取れたら用意しておいた氷水に入れて中華麺をしめる。

 水気を切った中華麺を真ん中が盛り上がるように盛り付けて、具材を放射状に乗せる。中華麺が見えないくらいたっぷりね。

「カレン、ご飯も炊けたよ」

 元気になったルイス狼とモニカ狼が後ろで尻尾を振っている。


「ご飯にしようか」


 具沢山の贅沢冷やし中華は1人1皿。チャーシューとバンバンジーは大皿で。ご飯は土鍋ごと食卓に並べた。

「私は冷やし中華から!いただきまーす」

 ごまダレもいいけど基本のタレもさっぱりで美味しいよね。

「美味い!俺たちのはチャーシューを多めに盛ってくれたんだな」

「カレンは良い子ね」


 そうルイスとモニカの冷やし中華はチャーシュー麺のように盛り付けた。

 私たちのために暑さを我慢してくれた2人の気持ちが嬉しかったんだよね。私が2人にお肉を食べさせたい気持ちは、2人が私を可愛いがる気持ちに負けていないんだからね。


「麺も具もタレも美味しい、一緒に食べると最高だね。バンバンジーも美味しいよ」

 最近ますます美少年ぶりに磨きのかかったウィルコは麺をすする姿まで美しい。


「分厚く切ったチャーシューが美味しいわ。カレン、さっき丼と言っていたわね」

 モニカの目が光る。

「うん。ウィルコがご飯を炊いてくれたからご飯もチャーシューも好きなだけ盛ってね。タレはこれ」


 ご機嫌なモニカとルイスがチャーシュー丼を盛り付ける。

「姉ちゃん、俺は汁だくがいい」

珍しくルイスが弟っぽい。

「はいはい。チャーシューは?もう一枚乗せる?」

「乗せる!」


 カッ!カッ!といい音がする。ルイスとモニカがチャーシュー丼を食べる音だ。


「甘辛い味付けの肉は生肉に劣らぬ美味しさだと知ってしまったわ…」

「また作ろうね、今日もたくさん作ったからまだあるよ」

「さすがに満腹だな、今日も美味かった」


 ルイスとモニカとウィルコとの4人家族で食べるご飯は幸せだね。

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