第188話 ホイッパーはパブリックドメイン
パブリックドメインは著作権切れのこと。パテント権が消滅しているから引用どころか改変も自由に出来る。
しかしホイッパーの利用者はゼロだ。
「このホイッパーはパブリックドメインに登録済みなんだけど、全然作られていないんだよね」
便利なのに!とウィルコが口を尖らせる。
「何かを混ぜる時にはいいけど、どんな時に使えばいいのか思いつかないわね」
「スイーツ作り以外で使うのか?」
エミリーさんとトーマスさんの意見が渋い。ウィルコが残念そうだが仕方ない、スイーツ作りが一般家庭に広まるまで、まだまだ時間がかかりそうだね。
「じゃあプリンでも作ってみる?」
「教えてもらってもいいの?」
「もちろんだよ!僕は全国でプリンが食べられるようになって欲しいんだ」
ウィルコの美少年度が大幅アップだ。スイーツの話をするとキラキラが増すってどういう仕掛けなんだろう。
「エプロンよーし!手洗いよーし!じゃあ始めようか!まずはカラメルを作るよ」
お鍋に砂糖と水を入れて火にかけ、茶色くなるまで煮詰めたら火を止めてからお湯を加える。出来上がったカラメルを容器に注いでおく。今日はメープルシュガーを使う。
「これがほろ苦くて甘いソースになるのね!」
「ああ。このほろ苦いソースは美味いな」
エミリーさんもトーマスさんもカラメルは苦味を効かせた方が好みらしい。
「次はボウルに卵を割り入れてホイッパーでほぐしたらメープルシュガーを加えてさらに混ぜるよ。泡立てなくて大丈夫」
エミリーさんもトーマスさんも余裕だ。
「鍋に牛乳を入れて火にかけて温まったら沸騰する前に火を止めて、卵液のボウルに少しずつ加えて、その都度よく混ぜる」
この工程もエミリーさんとトーマスさんは余裕だ。
「全部混ぜたらザルで濾してカラメルソースの入った容器に均等に流し入れるよ」
「プリンっぽいわね!」
エミリーさんが嬉しそうにはしゃぐ。プリンは簡単だから家でもぜひ作って欲しい。
「お鍋に薄いプリン液の入った容器を並べたら容器の半分くらいの高さになるように水を注ぐ。フタをして弱火でじっくり火を通すよ。強火でグツグツすると滑らかなプリンにならないから弱火でじっくりね!」
火にかけている間に後片付け。
「卵のコシを苦労せずに切れたな」
「泡立てるのは大変だけど、こういう使い方ができるのね」
トーマスさんとエミリーさん、ホイッパーの使い方に興味が出てきたみたい。エミリーさんの場合プリン専用として持っておいた方が良いと思うなあ。
「そろそろいいかな?蒸し時間の目安は容器を揺らした時に表面が軽く波打つ程度固まったらOKだよ」
ウィルコが容器を揺らしてみせる。
「良いみたい!あとは自然と冷えるのを待とうね」
プリンを冷やしている間に、エミリーさんが仕入れたリネンの話を聞いたり、秋の甜菜糖の仕入れ計画なんかについて相談した。
リネンの仕入れは楽しかったみたい。
「エミリーには俺の勝手で苦労をかけ通しだからな。そんなに喜ぶなら何度でも行こう。
今回注文した淡い色のリネンは、初夏には出来上がるそうだ」
エミリーさんの迫力に押され気味だと思っていたけど、それは2人のほんの一面だったようだ。トーマスさんがエミリーさんを見る目が優しい。
トラカイ村のリネンを紹介して良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます