第160話 王都のチーズ事情

 王都のランチタイム営業は春にチーズを仕入れるまで在庫がないという理由でお休みしているので今日は4人で市場の屋台村にお昼ご飯を食べにきたらトーマスさんに会った。



「今日も仲がいいな」

せっかくなので今日も4人で雰囲気を統一した服装で出かけてきたのだ。


「まあな!」

 ルイスが私を抱き上げてスリスリする。ちょっと嬉しい。



「あと1ヶ月くらいしたら雪解けの気配だ。もう後がない商人仲間を連れて北部に行こうと思う」

「みんな商売を立て直し出来るといいわね」


 王政時代に貴族や腐敗した御用商人や悪代官たちによる詐欺や掠奪の被害にあい、破産寸前の商人たちがいる。トーマスさんはそんな人たちを見つけては手助けしようとしているのだ。


 王政を廃止してから行政で資金の貸付を始めた。新しい取り組みのため行政側も慣れていなくて申請から審査、実際の貸付まで数ヶ月かかったが、やっと入金される見込みがたったようだ。

 その資金をもとにチーズやリネンで一儲けさせようと計画しているのだ



「あまり北の方へは行けないだろうから、まずは雪がそんなに降らない地域のチーズを仕入れてくる」

「チーズは王都でもけっこう人気が出てきたんじゃないか?」


「ああ、最初に定期的に卸すようになった居酒屋じゃあ常連たちが入荷はまだかと問い合わせがひっきりなしだ」

「新規の仕入れも断っているんだろう?」

「新規の申し込みには今回一緒に連れて行く商人たちを紹介している。卸す先が決まっているから仕入れられれば確実に利益に繋がるんだ」

「チーズはリピートしてもらえるから定期的な売り上げになるわね」


 そうそう、食べたら無くなっちゃうし、また食べたくなるから一度買って終わりじゃないもんね。



「チーズを卸した利益でリネンを仕入れに行く。こりゃあ、また売れるぞ」

トーマスさんが私たちを順番に見る。



「ふふふ気付いたか!初めて仕入れた時は姉ちゃんとカレンだけがペアルックで、ぶっちゃけ羨ましくて仕方なかったがな!」

ルイスが私にスリスリする。


 モニカがルイスから私を奪うように抱き上げた。

「私とお揃いのカレンは小さくて可愛いのよ!」

 その後もルイスとモニカの自慢は続いた。



 恥ずかしくて俯いてしまったが、本当はちょっと嬉しかった。

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