第182話 メープルシロップ

「甜菜の種を販売して回った後、さらに進んでいったら見覚えのある木があったんだよね!」


 シュガーメープル、レッドメープル、ブラックメープル…これらの樹液を煮詰めて凝縮させたものがメープルシロップ、さらに煮詰めるとメープルシュガーやメープルスプレッドになる。

 

「北東部のイルカイト村周辺はレッドメープルの群生地だったんだ。樹液の採取方法は僕も覚えていたし、採取したら煮詰めるだけだし簡単だったよ」


 トーマスさんとパーシーさんの目が驚きで見開かれる。甜菜糖だけでも充分だったのにメープルシロップまで出てくるとは思わなかったのだろう。



「メープルのある村でウィルコがメープルシロップの採取方法を教えて回った」

「あちこちの村で消費しきれないくらい出来たって喜んでいたよ!」

「余剰分を仕入れさせてもらったのよ」


 ルイスも私もモニカも2人の驚く顔を見て顔がにやけてしまう。いたずらが成功したような気分だ。


「南の黒糖と北の甜菜糖とメープルシロップで、この国の食料事情は変わると思うんだ!トーマスさんとパーシーさんも、そう思わない?」

 甘味大好きなウィルコがはしゃいでいる。



「現実的な話をしよう」


サン・ポル島から持ち帰った黒糖。

北東部から持ち帰ったメープルシロップ。

いま南部で生産されている黒糖。

秋に大量に生産される見込みの甜菜糖。


すでに全国各地で流通しているハチミツ。



「1年後には砂糖は贅沢品ではなくなるな」

「安くし過ぎてもダメよ。産地と生産者を守らなきゃ」

「でも誰もが買える価格じゃないと」


 大人たちで話し合って適正と思われる価格を出した。子供な私は蚊帳の外だった。


「秋に甜菜糖が出てくるまでは、ちょっと高いけど買える価格ね」

「秋以降は甜菜糖の出来次第だな」


「出来るよ!」

ウィルコが自信満々だ。



誰でも砂糖を買える日が早くくるといいね。

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