【番外編】3姉妹、小児インフルエンザから回復する

 翌朝3姉妹が目覚めるとカレンの髪を結うルイスが目に入った。


「ありがとルイス」

「今日も可愛いよカレンちゃん」

神様がデレデレだ。


「お、目が覚めたか。チキンスープがあるぞ。フルーツがいいか?」

「おはよう、僕は仕事に行くね。3人はゆっくり休んでて」


 神様を見送ったルイスとカレンで3姉妹の世話をしていると、神様と入れ替わりでモニカとヨルがお見舞いにきた。


「小児インフルエンザですって」

「3人ともか」

 


「モニカ…」

「ヨルムンガンド」

「不覚だわ」


 ヨルの本名を初めて知った。ヨルムンガンドは北欧神話の蛇だったと思うけどフェンリルなんだ。


「もしかしてルイスは寝ないで看病したんじゃないの?」

 モニカ狼が心配そうにルイス狼を鼻先でつつく。

「あとは俺たちに任せて少し休め」

「サンキュー姉ちゃん、ヨル」


 寝室に戻ったルイスが昼まで眠ったのでモニカとヨルと一緒に看病した。3人いると行き届いて助かる。

 朝はスープだけで十分だと言った3姉妹はお昼には少し食べられるようになったが、まだ熱も下がらず倦怠感も強いようでずっと眠っている。



「ただいまー」

「おかえりなさい!」

 夕方になって神様が帰宅したのでルイス狼と子狼な私が神様に駆け寄り尻尾を振って出迎える。


「どうだい?」

「朝はスープ、お昼にはお粥を食べたぞ」

「熱は少しだけ下がったよ」

「そっか、焦らずゆっくり静養していってね」

 神様が3姉妹をポンポンする。


「ありがとう」

「悪いわね」

「仕事も気になるわ」

「他の誰かがお休みの時はフォローしてくれてるんだからお互い様だよ。お熱が下がった後も体力が戻るまで仕事に復帰しちゃダメだよ」

 気にしないで休んでとポンポンした。



「夜ご飯はチキン中心にしてみたよ」

「経口補水液とゼリー飲料とフルーツもあるから食べられる物を食べられるだけ食ってな。おかわりもあるぞ」


 3姉妹はチキンスープとササミとゼリー飲料とフルーツを少しずつ食べた。昨日は嫌がったササミを食べて美味しいと言った。


「少し良くなっているね」


「ありがとう」

「みんなのおかげよ」

「夕食も美味しかったわ」


 3姉妹は小さくても理性的だった。うちの狼と違って、こってりした料理を食べたいとわがまま言って吐いたりしない良い子だ。

 モニカとヨルは私たちと一緒に夕飯を食べて、明日また来ると言って帰っていった。



 ルイスが深夜に目覚めた3姉妹の世話を焼いていると今夜もカレンが寝ぼけた。ルイスの匂いと気配を求めて転がるカレンを抱き上げると、ふんふんとルイスの匂いを嗅いで安心したのか抱っこされたまま眠ってしまった。


「可愛いわね」

「カレンちゃんはルイスが側にいると安心するのね」

「大人びているけど子供らしいところもあるのね」


超笑顔のルイスが3姉妹を振り返った。


「可愛いよな!俺の気配を探して寝ぼけるんだぜ!」


 ご機嫌なルイスは3姉妹を寝かしつけてから狼化してカレンに寄り添って眠った。




 それからさらに2日後、3姉妹は回復して大人に戻った。


「ありがとうルイス、カレンちゃん」

「この間はルイスが父親として相応しいか疑ってごめんなさい」

「ルイスは良い父親ね、もう様子を探ったりしないわ」


「俺は良い父ちゃんだからな!」

ルイス狼の鼻がツンと上を向き、胸が自慢げに反り返る。


「その評価、ちょっと待って!」


「カレン?何か不満があるのか?」

私が口を挟むとルイス狼が大袈裟なくらい動揺している。


「ルイスは良い父ちゃんだけど過保護なんだ」

「そのようね」

3姉妹がうんうんと首を縦に振る。


「将来、私にも彼氏とか出来るでしょ?ルイスに邪魔されそうだなって思うの!その時は私の味方になってほしいな」


「カレンに彼氏だと!?」

ルイス狼の全身の毛が逆立ってぶわっと膨らんだ。

「将来ね!」

 今すぐじゃないというカレンの言葉が届いていないのかルイス狼がわなわなと震えている。


「カレンちゃんの不安は理解したわ」

「あの様子じゃ前途多難ね」

「私たちはカレンちゃんの味方よ」


 ルイス狼が泣きながら子狼の私をペロペロするのを見た3姉妹が味方になると約束してくれた。

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