第213話 ルスランさんのケバブ

「今日はケバブを作るぞ!ぜひ食べていってくれ」

「うちの人の自慢のケバブなの」

「ワシのオリジナルのレシピだ」


「ルスランさんも料理をするのか!俺も料理は得意だ」


「いやいや、ルイスさんたちはゲストだからな」

「いやいや、商品をたくさん買ってもらった上にご馳走になる訳にはいかないからな」


 お互いにもてなしたい気持ちが高まり過ぎたため、ルスランさんとルイスがお互いに料理を振る舞うことになった。



「ルイスは何を作るの?」

「唐揚げだ。この辺りじゃ豚肉は一般的じゃ無いらしいからベーコンなんかはダメだろう。香辛料も醤油もないから、ニンニクと塩と乾燥ハーブで美味い塩唐揚げを作ってやるぞ」


 ルイスが筋や脂を丁寧に処理して一口大にカットしたお肉の半分は塩とオレガノ、ローズマリー、タイム、おろしニンニク、おろし生姜で下味をつける。

 取り分けておいた半分のお肉は塩とバジルとおろしニンニクで下味をつけておく。

 下味が染みたら粉をまぶして熱した油でじっくり揚げる。


 その間にモニカがドライトマトと乾燥キノコでスープを作り、ウィルコがパンを焼いた。


 3人が料理している頃、私はルスランさんのケバブ作りを見学していた。


「ワシのケバブは味付けした羊の挽肉を串焼きにするんだよ」

 ルスランさんが手際良く味付けした挽肉を串に巻き付けるように整える。


── これは再現できそうだな、ルスランさんのレシピはシンプルで美味しそうだけど、アレンジして香辛料とハーブを使っても美味しく出来そう。


「すっごく上手だね!食べる前から美味しいって分かるよ」

「カレンちゃんが褒めてくれるのは嬉しいがルイスさんがヤキモチを焼いてしまうなあ!」

 ルスランさんはご機嫌だった。胸を反らして『うほほ!』って笑ってる。自慢のレシピだけあって美味しそう。



「ルイスさんの方から美味しそうな匂いがするわね」

 ニンニクとハーブで味付けした唐揚げの匂いがルスランさんの奥さんのタハミネさんの鼻を刺激する。


「む!」

ルスランさんが反応した。


「カレンちゃん、ルイスさんは何を作っているのかな?」

「唐揚げだよ、味付けしたチキンを油で揚げた料理!」

「あらまあ、私たちもチキンは大好きなの」

 良かった、タハミネさんもルスランさんもチキンが好物みたい。


「むむむ…ワシのケバブだって負けていないぞ」

「ルスランさんのケバブ、とっても美味しそう!ルイスとモニカが全部食べちゃうかもしれないよ」

「そうか?そうかな?」

「あの2人はたくさん食べるんだよ」

「これだけあれば大丈夫だよ」


 ルスランさんの自信を上回る勢いで食べるかも…でも唐揚げもすごい量を揚げているから足りるよね。



「出来たぞ!」



 ルスランさんの呼びかけで全員集まってご飯だ。ルスランさんが率いる3家族と私たち。

目の前には山盛りの唐揚げとルスランさんのケバブ。


「パンも焼いてくれたのか、助かる」

「僕はこの焼き方しか知らないんだ、お口に合うといいな」

「ワシらが焼くパンはみっしり詰まっていてノンと呼んでいるが西方のパンも美味いと思うぞ」


「スープは保存食で作ったのよ」

「ありがとうモニカさん」

「野菜不足だから、ありがたいな」


「ルスランさんの肉をいただいても良いか?」

「ワシはルイスさんの肉を食いたい」

 待ちきれない様子だったルスランさんとルイスとモニカがお互いの肉料理に齧り付く。


「美味い!」

「本当…こんなに美味しい羊は初めてだわ」

「いやいやルイスさんのチキンも美味いな!」


 ルスランさんとルイスとモニカの食欲に火がついた。他の皆さんが置いてけぼりだ。予め大皿で皆さんに取り分けておいてよかった。

 

 私もケバブをいただこうっと…美味しい!焼いている時から香ばしい匂いがたまらなかったんだよね、美味しい〜!


「ケバブと野菜をパンに挟んでも美味しいよ」

 気がきくウィルコがパンに野菜とケバブを挟んでルイスとモニカに差し出す。パンでカサ増しするとはウィルコもやるな。


「本当!美味しいわ」

「野菜のくせに美味いな!」

モニカとルイスがご機嫌だ。


「このチキン、本当に美味しいわ」

「このハーブは何というものだ?」


「こっちはオレガノ、ローズマリー、タイム、おろしニンニクで、こっちはバジルだ。ルスランさんのケバブに混ぜても美味いと思うぞ」


 ルスランさんたちとルイスとモニカで肉を完食した。ルイスとモニカはともかく皆さん凄いな。

 しかも唐揚げの味付けを気に入ってくれて乾燥ハーブをたくさん買ってくれた。このハーブで唐揚げも作るけど新しい味付けのケバブに挑戦するって言ってた。



 翌朝、ワインとハーブを持ってまた来て欲しいって私たちを見送ってくれた。

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