第212話 遊牧民の拠点、ブルサル

 ブルサルらしき拠点が見えた。家畜の数がもの凄いから間違い無さそう。


 ルイスと私が御者席に座って馬車を進めると拠点から何人か出てきて私たちを見て何か話している。みんな視力が良さそうだ。



 このグループのリーダー、ルスランさんに挨拶してお互いに自己紹介した。


「俺たちは家族で行商をしているんだ」

「行商か!」

「酒はあるか?」

「小麦も欲しいわ」


 いまブルサルに滞在しているのは3家族の集団で家畜の群れを率いて移動しているらしい。家畜が牧草地の草を食べ尽くさないように定期的に別の場所へ移動しているんだって。


 遊牧生活では、ミルクや毛皮、肉などは自給自足出来るけど穀類やお酒なんかは交易で入手するしかないので行商は歓迎された。

 確かに定住して栽培する農産物や、長期間かけて醸造したり発酵させたりするものは移動生活に向いていないよね。



「コモティ村のワインがあるとは!」

「たまに交易でコモティ村のワインを持ってきてもらうことがあるんですよ、それに小麦!どれも良心的な価格で助かるわ」


 どうやらコモティ村の白ワインは貴重な商品らしい。リーダーのルスランさんも奥さんのタハミネさんも私たちの品揃えを喜んでくれた。


「国の上層部が変わって生き死にに関わるくらい厳しかった税が嘘みたいに軽くなったから商売も活発になってきてるんだ」

「安全になったから今後は商人の行き来も増えると思うわ」

「それはありがたいな、俺たちの毛皮や羊毛なんかも買ってもらえるか?」

「冬に売れそうだが、これから夏だからなあ」

「今は売らないで冬になる少し前に売る方がいいと思うわ」


「次の秋くらいをめどにに売りに行ってみるか」

 ルイスとモニカのアドバイスを受けてルスランさんたちが前向きに相談を始めた。



 1家族だけで羊と山羊と鶏、駱駝などを合わせて1000頭近く飼育しており、それが3家族分なので凄い集団だった。


 ダッチオーブンは重たいし嵩張るので不評だったけどメスティンとS字フックと洗濯バサミは喜ばれて3家族とも買ってくれた。どれもキャンプに持っていくと便利なアイテムだよね。

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