第27話 エレナさんからの相談

今日はエレナさんが孫を連れて我が家に相談に来た。


「エレナさんのお孫さん?」

「ええこの子はジャン、貴族の屋敷で働いていて雇い主の貴族に殺された娘の子供でね、もうすぐ成人するの」

 この世界の成人は16歳だから高校入学くらいの年齢か…若いよね。平均寿命が短いから仕方ないんだけど。


「この間カレンちゃんたちが持ち帰ったケチャップを使ってナポリタンの屋台でも始められないかって相談なの。本人は料理人になりたいらしいんだけど、どこも人を雇う余裕はないみたいで」


 治安は回復したけど、貴族階級が消滅して王都の人口が減ったのは良いことばかりじゃない。富裕層向けの商売は経営が苦しくなったし、そんな商人向けの商売も影響を受けたから。


「僕、ケチャップが気に入ったんです。あの味を広めたいなって。季節を問わず入手できると聞いたから定期的に仕入れられそうだし」

 先日の試食会でエレナさんはケチャップを買ってくれた。そのケチャップでナポリタンを作って家族にふるまったらしい。


「屋台でナポリタンは食べづらくないか?」

私もそう思うよルイス。

「フォークとお皿を持って屋台はちょっと…」

私もそう思うよモニカ。

「雨の日はどうするの?」

ウィルコは天然でぶっ込んでくるスタイルだ。


だから言ったじゃないという表情のエレナさんと、がっかり顔のジャン君。



「屋台ならアレがいいよ!」

私の現代知識が冴えわたるね。


「ポテトフライにケチャップ?」

「うん、ポテトフライを作って!」

 私の見た目は子供なので結界以外では料理をしない。大人たちにじゅわっと揚げてもらった。

 カラリと揚がったら全体に塩を振る。この世界は紙が貴重品だから紙の代わりに食べ物を包む定番の葉っぱがあるのだが、アイスのコーンみたいな形に丸まっている。その中に塩味のフライドポテトを盛って、上からケチャップをスプーンに大盛り一杯、ポテっと乗せる。

 この葉っぱは形が食べ物を盛るのにちょうど良いだけでなく殺菌効果があって食べ物を包むのに向いているらしい。


「これなら屋台向きだよ」

「まあまあ!これなら確かに歩きながら食べられるわね」

「揚げ物にケチャップの酸味が合うよね」


 凝った料理ではないのでジャン君一人でもやっていけるだろう。

ジャン君は定期的にケチャップを仕入れてくれるお得意様になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る