第28話 再び南へ

 ジャン君の屋台はそこそこ繁盛している。成人を迎えたばかりの少年がはじめた屋台に相応しい程度の繁盛ぶりだ。いずれメニューを増やせば利益を増やしていけるだろう。

旅立ちの前に少し余裕を持ってケチャップを卸した。

 メスティンも順調に売れており前回持ち帰った分の残りを追加で卸した。ダッチオーブンも持ち帰った分は完売済だ。


 私たちは再び南へ向かっている。

 サンタンデールでケチャップを仕入れてクエンカでダッチオーブンとメスティンを仕入れて、今回はさらに南へ向かう。



 今回の目的は美容ですよ!

 アルガンオイルとローズウォーターを仕入れに行きます。

 ついでにタジン鍋の料理も食べる気満々だけど目的は美容です。

 食べ物じゃないのでルイスのやる気が今ひとつだろうなと思ったらモニカまで元気がない。「次の街のご飯はヘルシーじゃないといいな」って、つぶやきながら小石を蹴っていた。天然美人は美容にガツガツする必要が無いのか…。


 着きました!前世でずっと来たかったシャウエンです。道や家や壁や階段は基本的に白いんだけど、それらが尽く青く塗られているのだ。青といっても同じ色ではない。濃い青から淡い青、水色、紺色、藍色まで場所ごとに違う青で染められた青い街なのだ。


「綺麗だねえ、地球のモロッコのシャウエンとそっくりな景色、名前も同じ!」

「真似したからね!」

 元気よくウィルコが答えた、真似したのかい!

 ちらりと見ればルイスとモニカは無反応だ。クエンカの鍛治組合でも無感動だったから予想はしていたよ。


「ねえ夜営で会った人に教えてもらったお店でご飯を食べようよ」

「そうだな、行ってみるか」

聞いていた通りタジン鍋のお店だった。地元の人でいっぱいの人気店だ。

「チキンとラムがあるよ、両方頼もうね」

ルイスとモニカにこんなに気を使うとは…。


「面白い形だね!とんがり帽子みたい」

 料理が届いたらウィルコが楽しそうだ、盛り上げてくれてサンキュー、ウィルコ。


 最初に出てきた料理は肉と野菜の煮込みだ。

 塩レモンが美味しい!私は塩とレモンの組み合わせが大好きなんだよねと思ってルイスとモニカを見ると微妙だった、あっさり過ぎたようだ。

 他の料理もルイスとモニカ向きではなかった、野菜が多過ぎた。オリーブやナッツがアクセントになって美味しかったよ、全体的に私は美味しく頂いた。私には美味しかったよ…。


 宿を取って部屋に入った途端に狼化したルイスとモニカに襟を咥えられて結界に強制転移された。

 豚肉を食べたいと言う2人に言われるまま、作り置きの豚の角煮と肉巻きおむすびと豚汁を鍋ごと出して許された。

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