第112話 ウィルコの憧れ
少し前から北部の小麦事情を見ながらカブの種を売って回っている。
カブの
一緒に春菊の種も販売している。害虫がキク科植物の匂いを嫌うので、他の野菜を無事に育てるためにも植えておくと良いらしい。
キャベツ、ほうれん草なんかも10月らしい。生前は農業に縁が無かったから全然知らなかったよ。
もちろん小麦や大麦の時期でもあるから種が必要とされたら寒さに強い品種の種子を販売している。寒い地域ほど
最近知ることばかりで不安になるけど、実際の農業に携わる皆さんはプロだから大丈夫なはず。
「北部の冬支度も進んでるね」
「どこに行っても今年は今までにないくらい準備出来てるって。みんな明るいね」
「カレンもウィルコも頑張った甲斐があるわね」
「モニカやルイスが協力してくれたおかげだよ」
犯罪者が自動的に収監されるようになり、旅が安全になったため交易も盛んになった。
税も普通レベルに下がったので生活に余裕も出来た。保存食の種類も少し増えた。
もっといろいろな食材を受け入れてもらえたら、食力不足解決に近づくけど食の好みは強制できるものではない。乾麺は好きな味つけで調理出来るから広まって欲しいけど、これも時間をかけていこう。
「ねえカレン?」
「何?」
「秋も終わるけど、この時期って地球ではもうすぐアレでしょう?あの行事!」
アレ?
「七五三?」
「もう!そんなボケいらないから!」
バシッと叩かれた。ウィルコのツッコミは激しい。
「ごめん、本当に分からないんだけど」
「もう!秋といえば収穫!収穫といえばThanksgiving Day、感謝祭だよね!」
── 感謝祭…?
アメリカのアレか!決算セールみたいなものしか思い浮かばなかったよ…アメリカかぶれなウィルコにとっては憧れの行事なんだろうな。
「アメリカの行事だったっけ?」
「もう!感動が薄いよ!」
そんなテンション高く詰め寄られても…祝ったこと無いし…。どっちかっていうと新嘗祭の方が親しみがあるわ。
ちなみに新嘗祭とは…Wikipedia先生には、天皇がその年に収穫された新穀などを
「ちょっと待って…調べてみるから。… アメリカでは11月の第4木曜日で祝日。親族や友人が集まる大切な家族行事。お正月みたいなものか」
「もう〜カレンたら!お正月と感謝祭は全然違うよ。黒豆、数の子、煮物のお節料理を食べてコタツで駅伝を見るんじゃなくて、大きな七面鳥の丸焼きにグレービーソースとクランベリーソースを添えて食べるんだよ!副菜には、アメリカっぽいオレンジ色のサツマイモの料理ね!デザートにはアメリカのパンプキンパイだよ!」
「ウィルコの世界でも感謝祭を定着させようって話かな?」
「それもいいね!僕はみんなで感謝祭をやりたいだけなんだけど」
──自分の世界のことを考えろや!
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