第55話 神様を招待して結界でご飯

「何が幸いするか分からないな」

「あの2人があんなに負けず嫌いだったなんてねえ」


 ルイスとモニカにとっても意外な一面だったらしい。


「…いやいや、私の見方はちょっと違うかな。シモンさんとテラ様がお互いを憎からず思っていて通りすがりの知らない異性に色っぽい表情を見せたことにヤキモチを焼きあっての行動かも知れないし」

「…カレンたら」

「お前、子供なのは見かけだけなんだな」


 ルイスとモニカは私がおばさんだって言いたいのかな?黙っているウィルコが賢明に思えるよ?


「余計なことを言ってるのは、このくちかしら?」

「カレンさんは暇なのですか?」

いつの間にか来ていた地球の神様とシモンさんに両側から頬っぺたを引っ張られた。


「リュイヒュ〜」

助けを求めたらルイスが抱き上げてくれた。頬っぺたがじんじんするよ、2人とも本気でやったな。


「今日は2人にピッツア以外の美味しいものを食べてもらうわよ」

モニカが話題を切り替えてくれた。


 ルイスとモニカが昨日から仕込みをはじめてローストビーフとローストポーク、コシードにカチャトーラを作ってた。私はチキン南蛮とアクアパッツァとバーニャカウダを作った。ウィルコが作ったケチャップと干物はお土産に持ち帰ってもらう予定。


 シモンさんもテラさんも肉食なんだね。アクアパッツァとバーニャカウダは肉と肉の合間にリセットするための道具にされてる。

豚肉→アクアパッツァ→ 牛肉→バーニャカウダ→鶏肉→みたいな。


「全部地球のレシピになっちゃったけど、他の世界のレシピってどんなのがあるの?」

「美味しい世界は、どこの世界も似た感じですよ」

「“美味しい世界”か“美味しくない世界”か、その違いくらいしか無いわね」


「ルイスとモニカの世界は?」

「焼くか生肉かの二択ね」

「あれも美味いんだぞ。カレンの作るような飯は食ったことが無かったな」

「そうそう、私たちの世界は生肉が絶品なのよ」

 狼目線の世界か…モフモフ好きだから興味あるけど自分が住むのに生肉ばっかりは辛いな。


「私は地球のご飯が好きだなあ、次に生まれるのも地球がいいな」

「あらあらカレンちゃんたら。嬉しいことを言ってくれるわね」

「他を見ずに決めても良いのですか?」

「ちょっとシモン!」

 シモンさんとテラさんが不穏だ。


「魔法のある世界もあるんですよ」

「…本当?」

 シモンさんたら、それは興味あるよ。


「ちょっとカレンちゃん?」

「魔法は興味あるけど食べ物が合わない世界は無理かも。食べ物が美味しくて魔法のある世界は?」

「ありますねえ」

「…カレンちゃん、あの世界は治安が悪いわよ」

テラ様が止めろと言う。


「…カレン、やめとけ」

 ルイスがフォークを置いた。

あのルイスが肉を食べて終わっていないのにフォークを置くなんて…。


「女の子が生きるには向いていない。あの世界はダメだ。許さん」

 ルイスが花嫁の父みたいになってる。


「オプションを付けて高いレベルで転生したら危険は無いですよ」

「ダメだ!あの世界には破廉恥で卑猥な触手がいる」

触手!?

「シモンの言う通りレベルが高ければ問題じゃ無いけど、ルイスが反対するのも分かるわ。そこら中にいるから油断したらレベルが高くても隙あらばヌルヌルといやらしく弄ばれるわよ」


「そんな世界、絶対にいやーーー!」

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