【番外編】海 (ルイスside)
ルイスが定期購読している『すこやか育児』の9月号が届いた。『すこやか育児』はキラキラネームは止めようキャンペーンを展開したり、信頼できる情報満載の育児雑誌でルイスの愛読誌だ。
── 夏の終わりのレジャーの特集か。そういえば最近遠出はしていなかったな。真夏は俺たち毛皮族には暑すぎるからな。
狼の毛皮がモコモコ過ぎてルイスもモニカもカレンも真夏は非活動的になる。
「カレン、来週あたり海に行こう。BBQだ。鉄の森の近くの海岸は涼しいからな」
「BBQいいね!」
ピンと耳を立てて尻尾を振り回すカレンが可愛い。
「姉ちゃんたちも誘うぞ」
「モニカたちも一緒!?ウィルコたちも?」
「ああ、ウィルコとエティスもだ」
「嬉しい!」
── はしゃぐカレンが可愛いな。
ヨルの故郷の鉄の森は夏が短く涼しいので毛皮モコモコな狼たちも快適だ。森から近い海岸は海風が快適そうだ。
「海だー!」
波打ち際で波と追いかけっこをするカレン子狼。小さな足跡がついては波に消されるのを飽きもせず繰り返す。はしゃぐカレン子狼を大人たちが見守った。
「カレンちゃーん、ルイスくーん、ウィルコくーん、エティスちゃーん、ヨルー、ごはんだよー」
父ちゃんに呼ばれて走って戻ると肉と海鮮のBBQの準備ができていた。
「BBQ!」
カレンが人型になってグリルの炭火を覗き込む。
「昨日、カレンちゃんとルイス君と一緒に準備したお肉とシーフードだよ」
「これはもう焼けたんじゃないかしら。ほらカレン」
モニカがカレンに海老を乗せたお皿を渡す。
「ありがとモニカ」
「これはカレンには熱過ぎるだろう、俺がむいてやる」
ルイスが父ちゃんらしく海老の殻をむいてやる。
「ありがとルイス。いただきまーす!」
カレンが好きな海老もBBQのメニューに加えて良かった。
「この海老、美味しいね」
「ソーセージも美味いぞ」
ソーセージをカレンのお皿に乗せてやる。
「ありがと。ルイスが焼いたソーセージも美味しいね」
── 今日もカレンが可愛い。
ふと横を見るとウィルコは若いお嬢さんとラブラブだった。微笑ましいな…と菩薩の表情で見守っていたが、『エティスをカレンに置き換えて、ウィルコを何処の馬の骨ともしれないオスに置き換えて』で想像してしまった。
「ルイスくん、美味しくなかった?」
振り返ると心配そうな父ちゃんだった。
「…肉は美味いぜ」
「そう?なんだかゴルゴみたいな顔になってたよ」
「心配いらないんだぜ」
── そう。カレンが彼氏を家に連れてきたら姑のように粗探しをして悪い男から愛娘を守るのだ。だから心配いらないんだぜ!と決意を新たにするルイスだった。
ルイスが決意を新たにした瞬間、ゾクゾクっと寒気を覚えたカレンがキョロキョロしていたことにルイスは気づいていなかった。
── レンタルしたビールサーバーから注いだ冷え冷えのビールも美味いし、大量に用意した肉も美味くて今日は最高だな!
── BBQの翌日。
「やはり永久に残しておきたいな」
「全面的に賛成だ」
ヨルとルイスの2人でテラスを増築することにした。屋根もつけて春や秋の気持ちの良い日にはここでランチを楽しむのもいいだろう。
ヨルと2人、ねじり鉢巻で気合いを入れた。テラスの基礎を作ったら時間との勝負だ。手早く生コンクリートを練って広げて平に慣らした。
「ヨルもルイスも上手だね!プロの大工さんみたい」
「カレン、子狼に変化しろ」
「?」
ルイスに言われるがままカレンが変化した。
「じゃあカレン、ここに下ろすからヨルのところまで歩いて行くんだ」
「まだコンクリートが固まっていないよ」
「だからだ。カレンの子狼時代の足跡を永遠に残して愛でるためのテラスだ。先日のBBQで砂浜に残る足跡を見て思いついた」
「恥ずかしいよ…」
カレンがもじもじしてしまう。中身は大人なのに今日もちびっ子扱いなので不満そうだ。
「いいわね!きっと可愛いわ」
モニカの期待に応えてカレンが素直になった。
「ほら、カレン」
人型のヨルが両手を広げて待っている。ルイスもモニカも神様もニコニコで、カレンは断れない雰囲気に流された。
トコトコトコ…。
真っ直ぐ歩いていくとヨルがカレンを抱き上げた。
「いい子だ。手足を洗ってやるからな」
面倒見の良いヨルが手足を丁寧に洗った。
「ありがと」
「ああ」
タオルを広げたルイスに渡すとルイスが優しく水分を拭き取った。溺愛が恥ずかしいけど嬉しい、そんな表情の子狼だ。
たまに誰もいない時にテラスにやってきては、自分の手足を足跡に重ねてみるけど長命な神狼なので一向に成長していなくて凹むカレンだった。
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愛娘を溺愛するルイス父ちゃん視点でした。
異世界の立て直しはお任せください! @Da1kichi
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