第137話 金曜日はフィッシュ&チップス

「ユセフさんが無事にデンハフ入りして良かったね」


 ウィルコとの定例会議でデンハフの様子を共有リビングのテレビに映してもらった。お供?後輩?のマスードさんが振り回されるのかな…と思ったら逆だった。

 だらしない生活を許さないマスードさんがスパルタでユセフさんを指導していた。


 掃除、洗濯、炊事を雑に済ませようとしてマスードさんに叱られるユセフさん。

『適度で良いんです。完璧でなくて良いんです。でも雑なのはダメです。余計な手間を増やすだけです』というマスードさんの主張はもっともでユセフさんは言い返せない。


「ユセフさんみたいな家事が苦手な人は男女を問わずいるよね。家政婦さんを雇えるようになれば解決するかな?」

「社員寮みたいな制度も検討してもらおうか?」


 ユセフさんの意外なダメっぷりから新たな課題が見えた。さっそく次の課題に追加して今日の定例会を終えた。



「ねえ、ホットドッグを食べたくなっちゃった」

 厳しい家事指導の後にホットドッグを食べ歩くユセフさんの様子を見て食欲を刺激されたらしい。


「いいね、じゃあ今日はホットドッグとフィッシュ&チップスにしようか」

「フィッシュ&チップス?」

「うん、今日は金曜日でしょう?金曜日といえばフィッシュ&チップスなんだよ。いろんな説があるらしいんだけどキリスト教では金曜日は肉を食べない慣習があって定着したって聞いたよ」

「へえ!面白いね!」



「パンとソーセージはインターネット通販で買っちゃおうよ、モニカー!ルイスー!ちょっと来てー!」


 窓辺で日向ぼっこしていたルイス狼とモニカ狼がドスドスとやって来た。

「どうしたの?」

 揃って首を傾げるルイス狼とモニカ狼が可愛い。


「今日はホットドッグにしようと思うんだけど良い?」

「美味しそうね」

「俺も気になっていたんだ」

尻尾ブンブンで可愛い。


「ソーセージはいろんなメーカーのものを買おうね、食べたいソーセージを選んでね。2人はどのくらい食べる?」

 タブレットでインターネット通販のアイコンをタップして購入可能なソーセージ一覧を表示させてルイス狼とモニカ狼の前に置くと寄り添って真剣に吟味する。肉球でスクロールする姿は賢いワンちゃんだ。可愛い。


 賢いルイス狼とモニカ狼がソーセージを選んではカートに追加し、最後に数量を確定させた。


「これ全部食べてみたいわ!」

「全種類食べてみたいから大きいのは姉ちゃんと半分こしようぜ」

 ルイス狼とモニカ狼は計画的で賢い。


「食べきれない分はアイテムボックスにしまっておいて別な日に食べようね。あとはパンを買って、トッピングにチーズとフライドオニオン、スパム、ベーコン、トマト、アボカド、ザワークラウト、ピクルス、グリーンチリ、レリッシュ、サルサ、シラチャーソース…こんなもんかな」


「カレン!コーラも買って!」

「2リットルで買ったよ、セブンアップとルートビアも」

「やった!ありがとうカレン」


「さっそく食べようよ。ホットプレートで好きなソーセージを焼いて好きなものを挟んで食べよう!」


 テーブルにホットプレートを設置して食材を並べるとルイスとモニカがソーセージを焼き始める。

 ウィルコは1人ドリンクバーを始めた。コーラとセブンアップをブレンドしてみたり、レモンを浮かべてみたり楽しそうだ、良かったね。


「姉ちゃん、そっちはもう焼けたんじゃないか?」

「そうね、これはザワークラウトが合いそうね」

「多めに入れようぜ」

 ルイスとモニカは協力して美味しい組み合わせを探している。出来上がったホットドッグを半分こして美味しい順位を決めて楽しそうだ。


 そんな3人を見ながらイギリスのパブからフィッシュ&チップスの出前を取った。

「揚げたてで美味しいよ!こっちも食べてね」


 私も自分のお皿に取ってモルトビネガーをかけて塩を振って…うんうん、美味しい!これこれこれ!


「これは魚だけど美味いな!」

「衣をつけて油で揚げると何でも美味しくなるんじゃないかしら」

 これはルイスとモニカも気に入ったみたい。ウィルコも予想通り美味しく食べてくれている。


「カリフラワーも美味いな」

 付け合わせの野菜に作り置きのカリフラワーチーズを出したらルイスがもりもり食べてくれている。


 私もホットドッグを頂こうかな…どのソーセージにしようかな…トッピングも迷うな。


「カレン?何を悩んでいるの?」

私の迷いにモニカが気づいた。


「どのソーセージにしようか迷っちゃって…どれも美味しそうだよね」


「俺のオススメは、こっちの肉肉しいやつだがカレンはハーブ入りが好きかもな。美味かったぞ、両方とも焼いてやろう」

「ルイスったら、カレンはピリ辛が好きなのよ。この旨辛いソーセージを焼いてあげるわ」


「ちょっと待って!私は量をたくさん食べられないから3つは無理だよ。フィッシュ&チップスも食べちゃったし!」


ルイスとモニカの顔が衝撃に包まれる。

「カレンったら…なんて可哀想なの…」

「目の前にこれだけソーセージがあるのに全部を食えないなんて…」


「私は全然悲しくないから大丈夫。ソーセージって、だいたい味の想像がつくし」

「いやいや違うだろう」

「そうよ、みんな違ってみんな美味しいのよ」


なにその「みんなちがって、みんないい」みたいな。金子みすゞ?


 カレンのために1番美味しい組み合わせを探してやる!と言ってルイスとモニカが本気になり、なかなか食べられない…お腹が空いてきたよ!


 待たされたけど2人が頑張ってくれたホットドッグは本当に美味しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る