第171話 黒糖を王都で

 サン・ポル島や南部の村で仕入れた黒糖を持って王都に戻った。


 戻った日の夜、マーマレードとケチャップで肉を焼いたらルイスとモニカが3kgずつくらい食べた。サン・ポル島では食欲を我慢してくれていたんだね、ありがとう。



 たらふく肉を食べて落ち着いたルイスとモニカを交えて今後の黒糖について話し合った。


「間違いなく南部の黒糖は引っ張りだこだぞ」

「今後の取り引きはどうする?」

「これから暑くなるからルイスとモニカと一緒に行けないものね」


 話し合ったけど良いアイディアが浮かばずトーマスさんを頼ることにしてトーマスさん夫婦を食事に招待した。



「南部に行っていたんだって?どうだった」

食前酒を飲みながらお互いの近況を報告し合う。トーマスさんは王都の近くで商売していたらしい。冬の間は遠出しないんだって。


「サン・ポル島に行ってきたよ」

「何にもない島じゃないか、細々と漁業で生計を立てていると聞く島だぞ」


ルイスをモニカがにんまりと笑う。


「何かあるんだな、その目つき…企みを隠しきれていないぞ」

「ふふっ、まあこれを食べてみろ」

「そうよ今日は食事に招待したんだから」

 黒糖オレンジジャムとケチャップでローストしたお肉を中心に組み立てたメニューを勧める。


「ハニーケチャップで焼いた肉か!」

「嬉しいわ、私たち夫婦の大好物なのよ」

ハニーケチャップは私たちがバンスカー村から持ち帰り、トーマスさん夫婦の協力を得て王都でシェアを伸ばしている調味料だ。


「いつも通り美味いな!」

「レモンかしら?爽やかな香りがするわ。美味しい味付けね、私たちも真似してみましょう」

 いつものハニーケチャップにレモンを効かせていると誤解しているようだが、ちょっと違う。今日は黒糖オレンジジャムとケチャップ焼きなのだ。


 食べながら雪解けと共に資金繰りに困っている商人たちを連れて北部へ向かうトーマスさん夫婦の計画を聞いた。


 トーマスさんたちはお金に敏感だけど自分だけで利益を独占せず困っている商人を見つけては手を差し伸べている。

 大きな利益を生むであろう砂糖の取り引きについて最初にトーマスさんに持ち掛けることにした。


「ああ美味しかったわ!」

「リネンで馬車がいっぱいになるから次の仕入れでバンスカー村に寄れないのが残念だな」

「次は絶対にトラカイ村よ」

 トラカイ村のリネンの大ファンになった奥さんが強い。強すぎる。



こんな時は奥さんに逆らわないと決めているトーマスさんが「…うん」とつぶやいた。

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