【番外編】神様は激務
「神様、大丈夫かな?」
「大丈夫じゃないだろうな」
神様は昨夜、帰ってこなかった。
どこかの世界で自然災害が発生しそうで、徹夜で対応に追われているらしい。
「自然災害ばかりは神の力でもどうにもならないからなあ」
ルイス狼と人型の私は神様への差し入れを持って執務室に向かっている。
「…ようやく落下予定の隕石の進路を反らすことに成功しましたね」
「人間や動物への被害を未然に防ぐことができて良かった」
「なにもない海のど真ん中だから被害は最小限に抑えられそうね」
「海の生き物の第六感に働きかけて早めに避難させないと…」
執務室から漏れてくる会話から緊迫した状況が伝わってくる。出直すべきだろうか。
「邪魔するぜ」
私は入室を躊躇したのにルイス狼がズカズカ入っていく。
「父ちゃんたちに差し入れだ」
ルイス狼に促され、慌ててアイテムボックスから取り出してテーブルに並べる。
「コーヒーと紅茶とサンドイッチなんかの片手でつまめる軽食を用意した」
「こっちのポットはコーヒー、こっちは紅茶。サンドイッチはタマゴ、照り焼きチキン、カツサンド、海老アボカド、BLT。おむすびは焼き鮭、焼きたらこ、スパム、オムライス、天むす。それからミートパイとアップルパイ」
徹夜明けのみなさんがモリモリ食べる。セレネさんやバステトさんも徹夜だったみたい。
「アップルパイが嬉しいなあ。ありがとうルイス君、カレンちゃん」
「無理しないで休んでね」
「ありがとう」
ルイス狼と2人まとめて神様にギュッてされた。
神様はお昼も戻らなかった。
「被害をもたらす前に隕石の進路を変更できたらしいのに、対応に時間がかかるんだね」
「ああ。海への影響も心配だし、しばらくは交代で見張っておくみたいだ。でもこういうことは割とよくあるぞ」
「そうなんだ。でも被害が発生する前に対策できて良かったね」
「そうだな」
ルイスたちは神様の愛玩犬ポジションなので対策に駆り出されることはないらしい。対策で疲れた神様にモフモフされるのが仕事らしい。
それを聞いた時は私がヒトダマだった頃、私を助けるために呼んだらすぐに来てくれたのは暇だったからか…と納得した。
「父ちゃん、差し入れだ」
「お昼のサンドイッチとおむすびは朝と具を変えてみたよ。コーヒーと紅茶の他にスープとお味噌汁もあるよ。甘いものはプレーンとチョコチップとブルーベリーのマフィンね」
「ありがとうルイス君、カレンちゃん」
執務室で働く皆さんの人数は朝と比べて半分に減っていたし神様以外は全員入れ替わっていたが神様は継続して勤務。神様って激務だ。
「ただいまー」
「おかえりなさい!」
その日の夜遅く、やっと神様が帰ってきた。
ルイス狼と子狼な私が尻尾を振って駆け寄るとモフモフされた。
「ああ…癒される…」
今日はルイス狼も私も神様の気が済むまでモフモフさせてあげた。明日のご飯は神様の好きなものを作ろう。
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