第138話 ソニアさんとユセフさん

 マスードさんのスパルタ式家事指導の土日を経て月曜日。ソニアさんとユセフさんが対面した。


「初めまして!来てくださってありがとう!」

「いや、こっちこそ誘ってもらって嬉しかった。やろうとしていることが似ているからライバルではなく仲間だったら…って何度も思った」

「ありがとう!私も同じように思っていたのよ」


「とはいえボスはあんただ。その線引きはちゃんとしよう。リーダーシップを発揮して俺を使いこなしてくれ」

「分かったわ」


 ユセフさんの言うことはもっともだが自分にもソニアさんにも厳しい。



「それよりも、ずいぶん疲れているのね。仕事は年明けからだから、ゆっくり休んで体調を整えてね」


 疲労が顔に現れているユセフをソニアが気遣う。


「ソニアさん、その優しさはユセフさんを甘やかすだけです。旅の疲れはありません。ユセフさんは昨日、掃除を適当に済ませようとしたものの僕にバレてやり直したり、料理を雑に済ませようとして返って後片付けに手間がかかって文句を言って僕に論破されて、こんな顔になっているだけです」


「ユセフさんも家事が苦手なの?」

ソニアさんの顔に期待の色が浮かぶ。


「ユセフさんの生活能力は悲惨なものです。家事偏差値は最低レベルです。今回、僕がユセフさんに同行する条件は、ユセフさんが自分で家事やスケジュール管理を出来るようになることなので、厳しく指導していきますよ!」


 マスードさんがキリっと言い切る横でユセフさんはなんとも言えない顔をしているし、ソニアさんも微妙な表情だ。



「そうだよね…家事くらいできるようになってもらわないと…」

 ソニアさんの息子たちが何か思い付いたようだがソニアさんの顔色が悪い。


「ここにいる間に母さんも家事をおぼえようね」

「任期が終わったら母さんは故郷に帰るけど、僕らは成人してるからね」

「母さんも僕らに、一緒に故郷に帰る必要はない、好きな仕事をしろって言ってたもんね」

「母さんが家事をできるようになったら僕らは遠くで仕事につくことも出来るもんね」


ソニアさんの顔色がますます悪くなった。



「マスードさん、どんな風に指導されているのか聞かせていただけますか?」

「もちろんだよ!」


 ソニアとユセフだけでなく、マスードとソニアの息子たちも良い関係を築けそうだ。

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