第197話 ソニアと息子たち
「おかえり母さん」
「お昼は昨日のクリームシチューの残りを温めて、お肉を焼いたよ」
ソニアのよく出来た息子たちがソニアを迎えた。
「ありがとう」
「パンは朝に焼いたものを温め直したよ」
「嬉しいわ。温め直したり少しの手間でずっと美味しくなるのね。私はパンを温め直したりしたこと無かったの。そんなに気が回らなかったわ」
「母さんの家事能力も少しずつ進歩してるよ」
「いきなり完璧は無理だよ」
「……」
よく出来た息子たちに褒められて慰められるソニアだった。
「母さんが手伝ってくれたシチュー美味しいよ」
「そうそう、母さんは煮詰めて味が濃くなったら牛乳やコンソメで伸ばして薄めるのも上手くなったよね」
「…ありがとう」
ソニアは鍋を焦がすことが多かったが最近は煮詰め過ぎる程度の失敗にとどまることが多いため、リカバリー可能だ。
ほぼ毎回焦がすのでリカバリーにも慣れた。
── この子たちは私を馬鹿にしているわけじゃ無いのよね、素直に私の成長を喜んでくれているのよね。そのピュアな気持ちが痛いわ。
「ユセフさんは今日もホットドッグ?」
「そうみたい、どこの屋台にしようかって浮かれながら出かけていたわよ」
「マスードさんがユセフさんの野菜不足を心配していたよ」
「ランチは仕方ないから夕食で必ずスープを作るよう見張っているんだって。もう若くないから食事や運動に気を使って欲しいんだって」
── そんな話をユセフさんやマスードから聞いた覚えがあるわね。マスードは毎回似た味付けのスープだからスープの種類を増やしてローテーションした方がいいって言うけど、俺は飽きていないってユセフさんが面倒そうに言っていたわね。
── 私はスープもシチューも何種類かレパートリーがあるし!もともと主婦だったし!まあ独身で外食ばかりだったユセフさんよりはね!
「いつも適当に買ってきた野菜とお肉を煮込むだけらしいんだけど不思議と美味しく出来るんだって」
「失敗した事ないってマスードさんが言ってたよね。味見しながら調整して美味しく出来ちゃうって言ってたからセンスは抜群なんじゃないかな」
失敗続きでリカバリーが得意になったソニアが微妙な敗北感に包まれたランチだった。
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