第130話 とある冬の日

今日は王都の家で過ごしている。


「支度できた?」

「うん」


 今日はヨナスさんが仕立ててくれた雰囲気ペアルックを着て王都をぶらぶらするのだ。

私はショート丈の子供ワンピース。モニカはロング丈。ウィルコはチュニックでルイスはシャツに共通の生地を使っている雰囲気ペアルックだ。


 トラカイ村のヨナスさんと村長さんからトラカイ村のリネンを着て宣伝してほしいと頼まれていたが、頼まれるまでも無く4人でお揃いは嬉しい。


「今日はどこに行こうか?」

「視察がてら市場に向かうか?」

「いいわね」

「市場に新しい屋台が増えて、行政がテーブルと椅子を設置したんだよ。ますます活気が出てきているんだ。お昼は屋台で食べようよ」

 最近のウィルコは国内の隅々まで把握している。すごく神っぽい。



「どんな屋台があるのかしらね!」

「肉だといいな!」

モニカとルイスは安定の肉目線だ。


 ルイスと手を繋いで市場を見て回る。人の多い場所では必ず誰かと手を繋ぐように強制されていて拒否権はない。中身は大人なのに。


「冬だけど商品がいっぱい、活気があるね」

「保存食、毛皮、毛織物、お酒なんかが多いわね」

「保存食は塩漬けが多いがオイル漬けも結構目につくな、短い間に広まったな」

「燻製とか乾燥させた乾物専門のお店もあるね」


 この冬はみんな飢えずに暖かく過ごせるだろう。市場は商品が豊富で買い物客も多く活気がある。隅々まで見てまわって一休みしたいと思ったら屋台村のような広場に出た。飲み物の屋台では暖かいハーブティーとホットワインが何種類か扱ってる。

 いいな…ホットワインか。冬のヨーロッパ旅行で訪れたクリスマスマーケットで飲んだホットワインは美味しかったな。


「肉があるわね」

「串焼きの屋台と煮込みの屋台が多いな」

「パンに肉を挟んだものを売ってる屋台もあるよ」


 私がホットワインに釘付けになっている間にみんなは食事の屋台をチェックしていた。


「手分けしていろいろ買ってきましょう」

 モニカの提案しでばらばらに買い物してみんなで少しずつ食べることになった。私とルイスは串焼きと飲み物を担当。テーブルと椅子を確保して交代で買い出しに行き、みんなが食べたいものでテーブルがいっぱいになった。

 ちなみに食べ終わると屋台村の担当者がお皿を下げてテーブルを拭いてくれる仕組みだ。完全にお客さん任せより回転率が上がっているように見える。


「美味しそうだね、いただきまーす!」

 私は串焼きから、岩塩のみの味付けだけど美味しい。

「丁寧に下処理してあるから美味しいね」


 初めてこの世界で外食した時と比べたら凄い進歩だ。煮込み料理もちゃんと出汁をとって灰汁もすくっている。

「俺はこの串焼きをおかわりする。姉ちゃんは?」

「食べるわ!」

ルイスとモニカが手分けして買い出したが量がすごい。さっきのは美味しい屋台を確かめるための味見に過ぎなかったようだ。


 ほぼ食べ終えた頃、ふと横を見ると野良猫がいた。小さくて可愛いなと思って見ていたら食事を終えたお婆さんが膝に乗せた。猫も慣れているのか膝の上で寛いでいる。

 ふと横を見るとルイスもお婆さんと猫を見ている。


──ふふっ、ルイスも小さな生き物が好きだもんね。


 なんだか見られている気がして横を見ると何か言いたそうなルイスが私を見ていた。

「どうしたの?」

 答える代わりに私を抱き上げて自分の膝に乗せる。


──私は猫じゃないってば!

降りようとするが、がっちりとお腹に手を回されている。


「ちょっとルイス!」

抗議するが聞こえないふりして私の頭のてっぺんに頬っぺたをすりすりしてくる。


「溺愛なのね」

 お皿を下げにきたお姉さんが微笑ましそうに話しかけてくるが、ルイスの場合はペット感覚だから!


 やっと飽きたか…と思ったらモニカの膝に乗せられてすりすりされた。

 離して貰えないので爆舐めよりはマシだと諦めてすりすりされた。

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