第22話 鉱山の街クエンカへ
ガンホーさんと一緒にクエンカに着いた。
「クエンカへようこそ!子供連れなら宿はマリアのところがオススメだ」
「俺が案内する」
「ありがとうガンホーさん!」
「嬢ちゃんは随分と気に入られたんだな、その髪飾り、ガンホーだろう?」
「うん、とっても可愛いよね!」
街の入り口で門番とほのぼのな会話を終えてオススメの宿に向かう。
「マリアはいるか?」
「ガンホーじゃないか、帰ってきたんだね。おかえり」
「昨日、野営地で会った商人のルイスとモニカの姉弟、2人の姪のカレンと奴隷?のウィルコだ」
「ようこそ、いらっしゃい。宿泊でいいかい?」
やはりウィルコのジョブが奴隷にダウングレードしていた。
食事無しの素泊まりで1週間頼んだ。新しく製品を作ってもらうなら延泊の可能性もあるけど清潔で良い宿だな。
今回も4人で1部屋を素泊まりで取って、まずは眠って休みたいと言って部屋へ。部屋に戻ったらすぐに転移で結界に帰った。
毎晩戻ってお風呂に入って自分のベッドで眠っているんだけどね。
「クエンカで何を広めるんだ?」
「これなんだけど問題は素材なんだよね」
インターネット通販で買ったキャンプ用品をテーブルに並べる。ダッチオーブンは鋳物なので、この世界にも馴染みはあるがアルミはダメだ。しかし素材以外は機能的で優れているので取り入れて製品化したい。生活レベルの向上だ。
「これはメスティン。メスティンは様々な料理に応用できる便利な調理器具なの。ピッタリサイズの網を合わせれば蒸し器になるから旅の間の調理も捗るしハンドルを折り畳めるから邪魔にならなくて良いよね。フタも調理器具として利用してる人もいるんだって」
3人?3柱?にメスティンを紹介した。旅の間に出会った人たちみんなロクな調理器具を携帯していなかった。優先順位が低いというより少し前まで食事を楽しむ余裕さえ無かったからだろう。
「この角度のあるハンドルはアイディアね」
「ああ。本体のぴったり重なる…これは凄いな」
ルイスとモニカがメスティンのハンドルに興味津々だ。
「素材は変換すればいいよ、鉄でいい?」
「うん」
ロリコン神によって鉄製メスティンに生まれ変わった。
ダッチオーブンとメスティンをクエンカの特産にしたい。ダッチオーブンは家庭用、メスティンは旅人用。クエンカの鉄の埋蔵量ならあと数百年は作り続けられるからね。
「ありがとう、じゃあ今日はメスティンでご飯にしようか」
ルイスとモニカに大きなメスティン、ロリコン神と私に小さなメスティン。
みんなで基本の白いご飯を炊いた、1人1メスティン。自分で炊いたメスティンから直接食べると楽しくて美味しいよね!
大きなメスティンで鮭のちゃんちゃん焼きも作った、濃いめの味付けで炊きたてご飯が止まらないやつ。
肉肉とうるさい狼のためにダッチオーブンでビーフシチューも作った。和食と洋食の混在について気にする人…もう人でいいや。
細かいことを気にする人たちじゃなくてよかった。
「これはいいな。旅の食事が楽しくなる」
「この世界の一般家庭のキッチンは竈門だからダッチオーブンはぴったりだと思うわ。調理台から竈門へ、竈門から食卓にオーブンを持ち運びできるって便利よね」
ルイスとモニカの感想もまずまずだ。お腹いっぱい肉を食べたばかりだから好意的なコメントなのかもしれないな。
「持ち運びできるから洗うのも比較的手軽だよね、洗いやすいっていいなあ」
ウィルコの着眼点が洗い物だった、完全に奴隷目線だ…奴隷扱いを徐々に解除してあげないと…。
「この世界ではまだお米が発見されていないからお米を炊いて見せることは出来ないけど麺類の調理も煮込みも出来るし麦を炊いて雑穀リゾットも作れるから便利に使ってもらえると思うんだ。今日はメスティンでデザートも作るよ!汚れ物は食洗機に任せようよ」
ウィルコを洗い物から解放してから作り始める。
「中くらいのサイズのメスティンに砂糖と水を入れてカラメルを作ります。焦げて香ばしい香りがしてきたら底全体に広げて冷ます。ボウルに卵と砂糖と牛乳を入れてよく混ぜて…漉しながら中メスティンに注いで…大メスティンに水を張ったら、フタをした中メスティンを大メスティンの中に入れて蒸し焼きにします」
弱火でじっくり蒸し焼きにしたら滑らかなプリンが出来た。
「滑らかで美味しいね!」
ウィルコがプリンを気に入ったようだ。
「この世界は砂糖が一般的じゃないから作れないけどサトウキビとかが見つかって栽培出来る体制が整ったら甘いものも広めようね」
「うん、ありがとうカレン!」
素直なところは美点だよ、変態だけど。
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