【番外編】Roulade(ルーラード)

「ねえカレンちゃん、ウィルコ君と3人で一緒に美味しいものを作ろうよ」


 今週末も神様は私を連れてウィルコの家に泊まりで遊びに来た。自動的にルイスとモニカとヨルも着いてきた。


「僕はスイーツがいいんだけど、ルイス君たちも一緒に食べられるものだったら嬉しいな」


 そうは言ってもルイスたちはスイーツを食べないからな…


「Roulade(ルーラード)は?」

「ルーラード?」

神様とウィルコが揃って首を傾げる。


「Roulade(ルーラード)は巻いたものっていう意味のフランス語で、魚や薄くのばしたお肉や薄くスライスした野菜で具材を巻いた料理のことらしいよ。日本語にすると○○巻きかな」


 ドイツではRouladen(ルラーデン)って呼ばれる似た料理があるみたい。ヨーロッパって言語が似てて学ぶのが楽そうで羨ましいよ。


 フランス語と英語は同じ綴りで同じ意味の単語が沢山あるけどRoulade(ルーラード)はイギリスでもRoulade(ルーラード)だ。

 フランス語を学んだことのない私がフランスのファッション誌を眺めていたら、ざっくり意味が分かった(つもりになった)ことがある。

 旅行の記事で地名は明らかだし、写真も豊富だったから雰囲気を理解した程度だと思うけどウラヤマだった。絶対に受験勉強が楽だと思う…ライバルたちも同じ条件だから自分だけが有利な訳じゃ無いけど。


「ルイスたちには巻き寿司とアスパラのベーコン巻きとか豚肉の野菜巻きを作ろうよ」


 本場っぽいレシピは材料を揃えるのも作るのも面倒なので簡単に和風のルーラードにしよう。豚肉で具材を巻いて甘辛いタレを絡めて焼くと、ご飯やビールが止まらないやつだ。


「僕たちのスイーツは?」

「ロールケーキはどうかな?」

「いいね!」


 イギリスでは巻いたスイーツはRoulade(ルーラード)よりもSwissroll(スイスロール)の方が通じたかも。ロールケーキは日本語だから、もちろん通じなかった…。


「ロールケーキを作ってから肉巻きを作ろうよ。スイスロールとメレンゲのルーラードの2種類!」

「メレンゲ!?」

「美味しそうだね!」

「ロールケーキ…スイスロールはイギリス発祥なんだって。メレンゲのルーラードもあちこちのカフェで見かけたよ」


 スイスロールはイギリスっぽくスポンジに薄くジャムを塗って巻いただけ。

 メレンゲのルーラードは甘さ控えめなメレンゲを焼いてクリームとフルーツたっぷりで巻いた。イギリスのカフェで食べたやつは甘すぎだった。

 

「巻き上がったから冷やしておこう。巻き寿司と豚肉巻きを作ろうよ」


 巻き寿司の具は卵焼きとキュウリとアボカドと椎茸の煮物とお刺身。ウィルコが美味しくご飯を炊いてくれて酢飯も作ってくれた。


「ウィルコは上手に巻くね!美味しそう」

「具沢山なのに綺麗だねえ」

「そうかな」

ウィルコが満更でもないって表情だ。



 アスパラのベーコン巻きは塩胡椒、インゲンとニンジンの豚肉巻きはお酒、醤油、砂糖、みりんで味付け。

 キノコ類を巻いたのとキャベツを巻いたのは好みのタレで食べよう、ポン酢も胡麻ダレも合うな。キャベツと豚肉の組み合わせは、キャベツと豚肉のミルフィーユ鍋の時にルイスとモニカが大好きな組み合わせだって言ってたから気に入ってもらえると思う。


「美味しそうだけどルイス君とモニカちゃんには全体的にあっさりかも…」

神様からツッコミが入った。


「じゃあ薄切りの豚肉に大葉とチーズを巻いたフライとネギ味噌を巻いたフライも作ろうか」

トンカツっぽいのでモニカが喜ぶと思う。


「僕が揚げるよ」

「ありがとウィルコ」

 私が以前より小さくなったのでウィルコが前より気を使ってくれるようになった。


「じゃあ俺がキャベツを千切りにしよう」

「ありがとヨル」

 人型になったヨルがキャベツを担当してくれた。本当にヨルは大人だと思う。



「いい音…」

「豚肉を揚げる音は最高だな…」

 モニカ狼とルイス狼が目を閉じて揚げ物の音を楽しんでいる。なんか…上級者って感じがする。喜んでもらえて何よりだ。


「全部揚がったよ」

「これで全部だな」

「ご飯にしよう!」


 神様とウィルコとヨルが出来上がった料理を全部テーブルに並べてくれた。私は取り皿やお箸をセットした。

 ルイス狼とモニカ狼は料理を運ぶ神様たちに纏わりついて邪魔をしていた。



「いただきまーす!」

 ルイスとモニカが全種類をモリモリ食べている。たくさん食べる2人が好きだよ。

私も食べようっと。


── 肉巻きは美味しいな…でも今日は食べ過ぎないようにしなきゃ。


「カレンちゃん、今日は特に少ないんじゃない?」

神様が私の食事量が少ないことに気づいた。


「だってデザートのロールケーキを一緒に食べたいもん」


ズキュン!


── ズキュン?何の音だろう?


「カレンちゃん!おじいちゃんもカレンちゃんと一緒に食べるデザートが楽しみだよ!」



 私が神様のハートを撃ち抜いた音だった。

何でも言うことを聞いてくれそうな孫バカの匂いがぷんぷんだ。わがまま放題できそうな雰囲気だけど悪用しないように自重しようと思った。

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