第75話 ハニーケチャップを披露

「ハチミツは肉に合わないだろう」

「2人で食べなさい」


── そう言ってた時もありました。


「カレンとウィルコで2ビン」

「料理に使う分量は多くないから当分の間、楽しめるな」

 モニカ狼とルイス狼の尻尾がブンブンだ。


「無くなってもインターネット通販でハチミツはいつでも買えるから」

「カレンは良い子ね」

 腹ポコなモニカ狼が私の襟を咥えて自分のポテ腹に乗せてくれたから、ありがたくモフモフする。



「さっき作ろうとしていた料理はどういうものなんだ?」

 腹ポコなルイス狼の質問に答える。


「ハチミツ、すりおろし生姜、トマトケチャップ、醤油、お酒をお肉に漬けて、漬け込んだタレごと焼くの。チキンでもポークでも美味しいよ。漬け込み無しでも大丈夫だから今度作るね」

「今から準備したらどうだ?」

「そうね、明日の昼には美味しく食べられるわね」

── 分かりましたよ。



「ローストポークを作る時の大きな豚肉にフォークで穴を空けて塩胡椒で下味をつけたらジッパー付きのビニール袋にハチミツ、すりおろし生姜、トマトケチャップ、醤油、お酒をよく混ぜたタレと一緒に入れておく」

「今回は醤油は無しよ」

「無くても美味しく出来るからオッケー。明日オーブンでじっくり焼こうね。もっと薄いお肉なら漬け込みは要らないよ、焼く時に合わせたタレを絡めながら焼くだけ」


「カレン、チキンもよ」

── チキンも漬け込んだ。モニカに指示されるままポークもチキンも多めに漬けた。


「豚スペアリブのハニーBBQソース焼きも漬け込むんだ」

── ルイスに指示されるままスペアリブも漬け込んだ。


 もういい? じゃあお風呂に入って寝ようかな。



 次の日もウィルコはアントンさんとニコルさんの手伝いに行った。養蜂の道具の手入れとか若い人がいる間にやっておきたいことを全部やろうってウィルコが提案したんだよね。ユライさんに頼んだトングの納品や冷燻が終わるまでにまだ時間があるからね。



「お腹空いたよー」

 ウィルコがアントンさんとニコルさんを連れてお昼ご飯に帰ってきた。


「おかえりウィルコ、こんにちはアントンさん、ニコルさん」

「はい、こんにちはカレンちゃん」

「さっそくハチミツを使って料理を作ったんですって?」

「うん、もうすぐ出来るよ!」


 ハニーマスタード・チキンのサンドウィッチは出来ているし、肉はダッチオーブンで焼いた。ハニーケチャップだれのチキンとポーク。

 豚スペアリブのハニーBBQソースは披露しない…というか出来ない。この世界には醤油もウスターソースもまだ無いから。昨日の夜に漬け込んだスペアリブは今日も夜に食べるんだって。ルイスが相当気に入ったらしい。


 スープはウィルコがカプストニツァを作ったが全体的に野菜が足りない。ハニーマスタード・チキンのサンドウィッチに使った野菜を小鉢に盛ってサラダにした。

 全員がテーブルについたらハニーマスタード・チキンのサンドウィッチとカプストニツァとサラダを配った。


「いただきまーす!」

サンドウィッチを頬張る。昨日の夜とかぶるけど、やっぱり美味しい。


「ハチミツをマスタードに合わせる発想は無かったな」

「でも美味しい組み合わせね、うちでも真似しましょう」

 やった!ハニーマスタードの組み合わせは受け入れられた。カプストニツァは問題なく美味しいしサラダも普通だ。


「メインの肉を切るぞ」

 ルイスとモニカがダッチオーブンのフタを開けて中の肉をアントンさんとニコルさんに見せる。

「これはチキンだ」

「こっちはポークよ、同じハニーケチャップのタレで焼いたの」


「食べ慣れない組み合わせかもしれないから、まずは少しだけ試してくれ」


 スライスして2人のお皿に肉を配るとアントンさんとニコルさんが肉を口に運ぶ。

「これも美味いな!」

「塩けと甘味と酸味?後を引くわね」

 2人とも社交辞令ではなく本当に気に入ってくれたようだ。

「もっと召し上がって」

 ルイスとモニカが大きく切った肉を配るとモリモリ食べてくれる。安心して私たちも食べる。


「ハチミツで肉を焼く発想はなかったなあ」

「美味しかったわ、良かったら作り方を教えてもらえないかしら?」


「ハチミツ、すりおろし生姜、トマトケチャップ、お酒をお肉に漬けて、漬け込んだタレごと焼くの、薄いお肉なら漬け込み無しでフライパンで絡めながら焼くだけよ」

「トマトケチャップは南で仕入れて販売してる、良かったら1つ持っていってくれ」

「売り物を悪いわ」

「うちもハチミツを貰ったからな、持ちつ持たれつだ」

「そういうことなら、ありがたく」

「ありがとう」


 帰宅したアントンさんとニコルさんが夜に自宅で再現して村長さんの家にお裾分けしたと聞いたのは翌日だった。

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