第74話 ハチミツで肉を食わせてやる
アントンさんとニコルさんがお土産に取れたてのハチミツを持たせてくれた。
「おかえりカレン、ウィルコ」
離れに戻るとルイスとモニカがいた。冷燻を見守っているはずなのに…
「私たちが夜も昼も交代で何日も見ているのは大変だから村人で交代するって言ってくれたのよ、次は明日の朝に見に行くわよ」
── それはアレだ。蒸留酒を飲みながら燻製をつまむのが楽しいことに村人が気付いたんだ。間違いない。
「ハチミツの採取はどうだった?」
「楽しかったか?」
ルイスとモニカは村人たちの思惑に気づいていないようだ。
「うん。ミツバチと人間の関係って面白いねえ」
「ウィルコが頑張ったんだよ、ハチミツも貰っちゃった」
私とウィルコがハチミツの入ったビンを掲げてみせる。
「あら、良かったわね」
「ウィルコとカレンが好きそうだな」
「2人はハチミツは好きじゃないの?」
「肉に合わないだろう」
「2人で食べなさい」
ルイスもモニカも素っ気ない。今日も安定の肉目線だ。
「じゃあ朝食の時にパンにつけて食べようか、カレン?」
「今日はハチミツを使って夕食にします!」
そう宣言してルイスとモニカとウィルコと一緒に結界に戻ってきた。ルイスもモニカもハチミツを馬鹿にし過ぎですよ! この狼たちをハチミツ好きにしてみせます!
「1品目はハニーマスタード・チキン・サンドウィッチ。ハチミツ効果で胸肉が冷めても柔らかくて美味しいんだよ」
まずビニール袋にチキンの胸肉と白ワインを入れて揉みこんで置いておきます。その間に一緒に挟む野菜を用意するよ。今日はニンジンと紫キャベツを千切りにして、それぞれに塩をふって、しんなりしたら水気を絞って、それぞれ塩胡椒とレモン果汁で和えておく。トマトとアボカドはスライスする。
漬けおきした胸肉に塩と胡椒を強めにふったらオーブン可の耐熱容器に入れて、ハチミツと粒マスタードと粗挽きマスタードと少々のレモン果汁で和える。マスタードを2種類使うのは見た目に美味しそうだから。それと私が肉とマスタードの組み合わせが大好きだから。
和えた胸肉は180℃のオーブンで20〜30分くらい焼く。胸肉のサイズによって焼く時間を調整するよ。焼きあがった胸肉はスライスしておく。
炙ったバゲットは横半分にスライスしてバターを塗って、レタス、ハニーマスタード・チキン、トマト、アボカド、紫キャベツ、ニンジンの順に重ねる。ハニーマスタードチキンは多めに、野菜は少しずつ、断面がきれいになるように。
ラップで包んで馴染ませる。その上からワックスペーパーで包んで、真ん中で切って器に盛ると断面萌えなハニーマスタード・チキン・サンドの完成!
ルイスとモニカの目の色が変わった。もうハチミツをバカにさせませんよ、ふふん。
「2品目は豚スペアリブのハニーBBQソース焼きを作るよ」
スペアリブは全体にフォークで穴を空けてから全体に塩と胡椒をふる。
ビニール袋にスペアリブ、おろしニンニク…今日はチューブね。それと玉ねぎのすりおろし、サンタンデールで仕入れたケチャップ、醤油、ウスターソース、ハチミツを入れて揉み込んでから漬け込む。1時間くらいね」
ルイスとモニカがカッと目を見開いた。
「貸してごらんなさい」
モニカがスペアリブの入ったビニールを取り、念入りに揉んだ。
「これで1時間漬け込んだ状態よ、さあ早く焼くのよ」
── モニカが怖い。神の力で漬け込み時間を短縮したらしい。
「オーブンを200℃に予熱するんだけど、さっきハニーマスタードチキンを焼いたから予熱は出来ています。汁けをきったスペアリブを並べてオーブンで焼きます。途中で何度か残ったたれをかけながら焼いて、美味しそうな焼き目がついたら完成!」
ルイスとモニカが狼化して尻尾を振り始めた。
「3品目はゴルゴンゾーラのピッツァ、焼きたてにハチミツをたっぷりかけると美味しいよね、私はゴルゴンゾーラが苦手なんだけどハチミツと合わせると信じられないくらい美味しくなって、初めて食べた時はびっくりしたよ。クワトロフォルマッジでも美味しいけど今日はゴルゴンゾーラ!」
薄い生地にチーズたっぷりで焼いた。
「4品目はハニーケチャップ味のローストポークを…」
「そこまでよ、カレン」
ハニーケチャップ味のローストポークを作ろうとしたらルイス狼にバクっと手を食われた。甘噛みだけど。
「4品目も美味しいのは分かるわ、でも待てないの」
モニカ狼の目がギラギラと光る。
「じゃあテーブルに移ろうか」
ルイスとモニカが人型に戻る。私は手を洗ってからテーブルへ。ルイス狼の口は大き過ぎるよ!
アイテムボックスに入れておいた出来たての料理をテーブルに並べる。
「いただきまーす!」
私はゴルゴンゾーラのピッツァから!
薄い生地にトロトロのゴルゴンゾーラ、そこに取れたてのハチミツを、たーっぷりかけて…美味しい…ゴルゴンゾーラとハチミツの組み合わせって幸せ。
ゴルゴンゾーラ単品はクセが強くて苦手なんだけどハチミツと合わせると最高に美味しい…。ウィルコも幸せそうに食べてる。美味しいよねえ。
「この複雑な旨味はハチミツなのか?」
ワイルドにスペアリブを食べるルイス。くそうカッコいいな。さっきまで狼の姿でヨダレを垂らしてたくせに。
「うん、甘辛い味付けってやみつきになるよね」
「このチキンも美味しいわ、野菜が邪魔だと思ったけど肉を引き立てているわ。野菜のくせに良い脇役ね」
ルイスとモニカがハチミツに敬意を抱くようになった。たくさん仕入れて広めたいと意気込んでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます