第202話 ルイスの異変

 自分の部屋のベッドで目が覚めた。


── 昨夜はワインで寝ちゃったんだっけ。お風呂に入ってからリビングに行こう。


 二日酔いでは無いけどスッキリと気分を切り替えたかったのでお風呂につかったら朝から気分が良い。


「おはようウィルコ」

「おはようカレン」

「モニカ、昨夜はありがとう」

「なんてことないわよ」

モフっと抱きついたら鼻先でつつかれた。


「ルイスは?」

「今日はまだ起きて来ないのよ」

「久しぶりの旅で疲れたのかな?」

「そうかもね、ここは時間経過無しだから今日はゆっくりしようよ」

 ウィルコの言う通り、朝の時間を楽しむことにした。



「まだ眠いな…」

 ルイス狼が大きなあくびをしながら、のそのそとリビングにやってきた。


「おはようルイス」

「おはようカレン」

「ルイスったら疲れてるの?」

「そのようだ」

もう一度大きなあくびをする。


「今日はここでゆっくりしようよ。ルイスは朝ごはんは?」

「あっさりした肉が食いたい」

お肉は食べたいんだ。


「ご飯は炊いてあるから大根おろしと牛肉のしぐれ煮を乗せて丼にしようか」

「美味そうだな」

「私も食べたいわ」

 ルイス狼もモニカ狼も大きな丼でお代わりした。モニカは今日二度目の朝ごはんだ。


「大根おろしと牛肉のしぐれ煮を組み合わせると無限に食えるな」

 お腹ぽっこりな狼たちが幸せそうに転がっている。今日も可愛い。でもやっぱりルイスは元気が無いように感じる。



「う、ううう…」

ルイスが急に苦しみ出した。


「ルイス!」

「ルイス!?」

「どうしたの?」


 ウィルコと私がルイスに駆け寄ると、私たちの目の前でルイスが小さくなった。


「きゅう!」


ルイスが子狼になった。


「…小児インフルエンザだわ」

「小児インフルエンザ?」

「私たち神狼がかかる感染症よ。熱が下がれば元通り大きくなるわ」


 小さくなったルイスがモニカを見上げる。

「姉ちゃんがでっかくなった」

「ルイスが小さくなったのよ」


 ハスキーの子犬みたいで可愛い。


「ルイスが小さかった頃を思い出すわね」

モニカがちびルイスを抱え込むように抱きこむ。



*******

「今年はA型が流行っているんですよ」

 心配過ぎてシモンさんを呼んだらすぐに来てくれた。


「ルイスも小児インフルエンザA型ですね」

 シモンさんが診察してくれてルイスの病名が確定した。


「ルイス…」

「良くなる?」

ウィルコも私も心配でならない。


「大丈夫ですよ、注射で治ります」

 逃げ出そうとしたちびルイスをモニカが右前脚で押さえる。


「姉ちゃん!離してくれ」

ジタバタするちびルイスが可愛い。

「だめよルイス」


「注射の代わりに薬を飲みますか?」

「………」

黙り込むちびルイス。


「神狼は注射も嫌いですが飲み薬も嫌いですからね。もしも飲むといっても、それは注射から逃れたいだけの嘘です」

「や、やめろシモン」

「だから注射なんですよ」


ぶす!


 シモンさんが容赦ない感じでちびルイスに注射をうった。


「うう…酷いめにあったぜ」


 ちびルイスがヨロヨロと歩いて窓辺に移動し、私たちに背を向けて座り直す。注射をうたれたことを怒っているアピールが可愛い。

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