第153話 リネンのトラカイ村

 さらに北部の村を回って、室内で栽培出来る野菜の種を販売した。


 バンスカー村でも野菜の種が多く売れたが、ガチムチな鍛治師のユライさんは野菜よりもハチミツだった。再会を喜んでくれたというよりも甘味を追加購入出来て嬉しかったのは明らかだった。

 以前はギリギリの生活で、とても買えない贅沢品だったが、この数ヶ月で嗜好品を自由に購入出来るようになったと聞いて私たちも嬉しかった。


 さらに周辺の村を回って、今日はトラカイ村に来た。トラカイ村は美しいリネンが特産の村だ。まずは村長さんに会いに行ったらヨナスさんもいた。


「今日も着てくれているんだな!似合うぞ」


 モニカとお揃いでお仕立てしてもらったヨナスさんのリネンで作ったワンピースを着ていたら、すぐに気づいてくれた。


「王都での人気は凄いぞ」

「雪解けを待ってトーマスさんが他の商人を引き連れてくるから驚かないでね」

「商人のトーマスさんなら馬車に乗るだけ買って行ったぞ」

ルイスとウィルコの言葉に答える村長さん。



「あっという間に完売したらしいよ」


 ウィルコの返事に村長さんとヨナスさんが目を見開いた。


 ヨナスさんが仕立ててくれた雰囲気ペアルックで王都の市場に出かけたらトーマスさんにばったり会ったのだ。


「モニカとカレンを見てお揃いにしたいって言う親子が多くてヨナスのリネンは完売。シンプルな方も素材の質がいいからベッドのシーツなんかに引っ張りだこで完売だと言っていたな」

「春になったら他の商人にも声をかけて買い付けに来ると言っていたわよ」


「それは嬉しいことです。代々作り続けてきた伝統のリネンの品質を認めてもらえて。さっそく村人にも伝えましょう、冬の間の作業の励みになります」

 春にまた売れる見込みが立って安心した様子の村長さん。



「確かに欲しくなるのは分かるな、最高のモデルだ」

 お揃いのワンピースを着るモニカと私をみてニヤリと笑うヨナスさん。



 私は村長さんの家に来てからずっとモニカの上に座っている。1人で座れると言っても離してもらえず、後ろからほっぺたモチモチされたり、スリスリされたりしている。


恥ずかしいけど、ちょっと嬉しいのは内緒だ。

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