第51話 エメン村の運命が動いた日
商品と価格の一覧をボードに書いて貼り出した。それをみて購入希望数を申告する。在庫は充分あるけど、万が一不足した場合に公平に販売するためと伝えたら混乱は起きなかった。注文の締め切りは明日の昼まで。
なので今日も村長さんのお家に泊めてもらう。
「いやあ凄い反響でしたね」
「ピーラーとチーズ下ろし器は全員が欲しがると思うわ」
アンリさんとメラニーさんが、まだ興奮している。
ちなみに今日はグラタンだ。デモンストレーションで一口しか行き渡らなかったから。
もちろんルイスとモニカは肉の塊をローストしている。今日はビーフだって。
モニカに頼んでグラタンにゆで卵を半分にカットしたものを入れてもらった。コク美味になるんだ。これはみんな気に入ったみたい。
食後、ルイスとモニカがアンリさんに真面目な話をした。
「これはこの地域でもよく育つジャガイモの種芋だ。この辺りじゃ上手く育たないんだろう?」
「この辺りの環境は厳しいんだ…」
「ちなみにお高くはないから安心していいぞ」
「無理してるんじゃないのか?」
「チーズを売ってくれ」
アンリさんとメラニーさんが固まった。
「美味しいから人気になるわ。自信を持って増産して欲しいの」
アンリさんとメラニーさん、全然信じていない顔だ。
「俺たちが憧れの食材にしてやる」
「近い将来、商人たちがこの村に押し寄せるわよ」
「で、では皆さんに優先して販売を…」
「その必要はない」
「私たちはこれからグリュー村へ行くわ。あそこにもチーズがあるのよ」
「俺たち商人が、あちこちの酪農家と取り引きするのも、お前らがどの商人と取り引きするのも自由だ。お互いにな」
「私たちもまた来るわよ」
「その時は美味しいチーズを売ってね」
翌日、注文通り商品を販売して肉食姉弟と姪っ子と弟子の4人組は出発した。
希望なんてないと諦めていたエメン村の運命が動いた日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます