第53話 選挙の神託と自家製ロースハム
「選挙の告知をしよう」
「冬に実施するんだっけ?」
「うん今はまだ社会も混乱してるし夏に立候補の受付を開始しよう」
「それだけ時間があれば国民全体が投票について考えて行動出来るね」
今までの神託は全部、教会と役所に貼り出して誰でも閲覧出来るようにしている。ちょっとした追加や修正は、結構やってきた。そういう時は教会に行けってシンプルに夢でメッセージを送ってる。
教会の負担が大きいかも知れないけど教会に行ったらお布施するから良いよね。ウィルコが良いって言ってるし。
大きな項目は神託で全人類に強制的に聞かせる。選挙の告知はそれにあたる。
「投票日は12月。すべての成人の有権者に選挙権がある。犯罪奴隷に選挙権はなし。選挙違反は即犯罪奴隷行き」
「うん、そこは厳しくするべきだな」
投票所は日本の投票所みたいにブースに区切って外からは見えない。選挙権ある人にバッジを配布するので投票したい候補者の箱に入れてもらう。カウントは自動。箱に入れたらバッジは回収される。
誰が誰に投票したか秘密は守られるし、誰がどのくらい得票したかは開票まで分からない。
「開票結果は神託で自動で発表。投票所はこちらで準備する。各市町村に1カ所以上は必要ですね」
これはシモンさんとウィルコがやってくれるって。肉を貢いだ甲斐があったよ!
選挙で選ぶのは国のリーダーで役職名は大統領。大統領に許されることを予め決めておけば混乱は起きないよね。
今はリーダーの代わりに神託を下ろしていて、現場では何となくお互いに悪くないように無難にやって欲しいとしていることを選挙後はきっちりやっていくのだ。
王宮官吏や教会組織の各部署のリーダーも選挙で決める予定、こちらも任期は四年で立候補も他薦もあり。一度勤めたら連続して候補にはなれない。こっちの選挙権は各部署のメンバーにのみ与える。定期的に部署移動もさせて組織がよどむのを防ぐし違反したらステータスに表示。悪質なら犯罪とみなす。
…こんな感じかな。
準備も実施もこっちでやるから国民に混乱は無いよね。立候補の仕方と締め切りと投票日だけ気にしておいてって感覚だけど、ついこの間まで圧政に苦しんできた人たちだから真剣に向き合ってくれると信じてる。
「いずれ選挙も国民たちで出来るようにしたいね」
まずは自分たちのリーダーは自分で選べるんだって実感して欲しい。
仕事の後はご飯だ。
「今日は自家製ロースハムを仕込むよ」
ウィルコはもちろん、ルイスとモニカが上機嫌で手伝ってくれる。
「脂がしっかりと入った豚ロース肉の塊を用意します」
私が1つ、ウィルコが1つ、ルイスとモニカに5つずつ…まあいいや。
「塩は肉の重量に対して2%、胡椒は肉の重量に対して0.5%用意します。肉が1kgなら塩は20g、胡椒は10gね。この塩胡椒を肉全体にまぶします。よく揉み込んだら、スライスしたニンニクとタイム、エクストラバージンオリーブオイルと一緒にジッパー付きのビニール袋に入れて24時間寝かせる…ルイスさん、モニカさん、お願いします」
ルイスとモニカが袋ごと肉をモミモミすると24時間寝かせた状態になる。神の力を食欲に使ったところしか見たことないな…平和でいいな。
「ここで低温調理機の出番です。お鍋にお水を入れてビニール袋ごと入れて低温調理器をセットしたら60~70℃のお湯で1時間半くらい湯せんします。これより温度が上がると肉質が固まってしまって台無しになるので低温をキープしてね」
そんなにかかるのか…って残念顔の狼たち。
「その間に他の料理を作ろうよ、まずはドイツの屋台で食べたカリーヴルストね。焼いたソーセージの上にケチャップをかけてカレー粉をまぶして出来上がり。ポテトフライを添えてね。温かいものも欲しいから具沢山のポトフも作ろうよ」
ポトフはウィルコが作ってくれた。本当に半年ちょっとで別人だよ。
1時間半後、湯せんした袋から肉を取り出して表面の汁気を拭き取ってからオリーブオイルをひいたフライパンで全体に焼き色をつけるよ、ここは思い切って強火でね、好みの厚さに切って完成!
「ご飯にしようか」
テーブルに自家製ハムと具沢山のポトフ、カリーヴルストを並べる。スライスしたハムはほんのりとピンク色で大成功!
「いただきまーす!」
まずはハムから…
「柔らかくてジューシー!脂が甘いね、美味しい…」
「肉を食ってるって感じがするな!」
「分厚く切って正解ね!」
ルイスとモニカには3cmくらいの厚さでカットしましたよ。
「そのままでもマスタードを付けても美味しいね」
ウィルコも気に入ったみたい。
「ウィルコのポトフも美味しいよ」
「このカリーヴルストはエレナさんのお孫さんの屋台で売ったら流行るんじゃない?」
「まだ無理だよ、カレー粉がないもん」
「早く見つけてやりたいな」
4人の旅はまだまだ続くってことだよね、嬉しいな。
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