第96話 ハルミレ村への神託とモヤシのススメ

  石鹸作りについて4人で検討した結果、しばらくの間、苛性ソーダは教会で管理することにした。ハルミレ村の教会にのみ製法を伝えて使用できるのも教会関係者のみ。

 月に一度、苛性ソーダの危険性について研修代わりに神託を下して取り扱いの注意を呼び起こす。

 苛性ソーダを扱えるのはハルミレ村のみだから石鹸を特産品として村おこしが出来ると期待している。



 現地には行かずに結界からウィルコが神託で遠隔操作するからルイスとモニカの暑さ対策もバッチリだ。


「村中に神託を下したよ、オリーブオイルを使ってハルミレ村の教会で石鹸を作るようにって。製造に必要な素材は危険だから教会で管理させるとも伝えたよ」

「どんな反応だった?」

「怖がっていたよ、皮膚に触れたら火傷して、目に入ったら失明するって伝えたから」


── 村人たちが罰ゲームみたいに感じていないといいけど…。


「村を豊かにするために必要なんだって強調したよ。危険を最小限にするために教会関係者で志願する者がいたら製法を伝える。危険を伴う素材に関われるのは志願した教会関係者のみ。出来上がった石鹸は村のために利用したり販売するように。辞退するのも自由、強制はしないから良く考えて決めること、回答に期限は設けないって」


「もし辞退されたら上質なオリーブオイルを生産できるように導いて行こうよ。世界が豊かになったらブランド化して販売できるように」

「それは良い考えね」

「もともと品質は悪くないだろ、安定して高品質を保てれば上等だ」



 いつハルミレ村から回答があるか分からない手持ち無沙汰な時間が出来たので農業が上手くいっていない地域を回ることにした。

 ちょうど夏野菜から葉菜類ようさいるい、根菜類への切り替えの時期なので病気に強い地球の種や苗を持って国中を転移で行商した。


 畑に直接種を撒くホウレンソウ、コマツナ、ダイコン、ニンジン。苗を育ててから畑に植付けをするレタス、ハクサイ、キャベツ、ブロッコリー。

── 特にブロッコリーは栄養豊富なので広めたいけど、これを広めたら国中の子供から恨まれそうだな。ルイスとモニカもブロッコリーは嫌いだし。


 ブロッコリーを苦手な人にはブロッコリースプラウトを勧めたら食べやすいかな。ついでにモヤシの栽培も広めよう。冬の野菜不足の解消にいいよね。


・日光に当てない

・1日2回以上の水の入れ替え

・10℃以上の屋内で栽培する


この3つさえ守れば数日から10日くらいで収穫できるからね。


 いろんな豆で出来るけど私のオススメはレンズ豆だ。レンズ豆は水に浸けずに調理に使えるから生前も常備していて、いろんなレシピに使っていたし、モヤシにすると生育が早くて4~5日で収穫できるから楽しいんだよね。


 高さのある大きめの容器に種を入れて、種の5倍以上の量の水を注いで吸水させる。成長すると増えるから豆は少なめにね。


 水が濁ってきたら入れ替えて濁りが無くなるまでシャバシャバと振り洗い。水が濁っていると腐るのでしっかり洗う。2〜3日で発芽して茎が伸び始めるので、引き続き水の入れ替えをしっかり行う。茎が5cmくらいで食べごろ。レンズ豆のモヤシはスーパーで買うモヤシより細いかな。



 問題はモヤシが洋風なレシピに合わないことくらいだな。モヤシといえば和風か中華…エスニックに合うよね…。冬の野菜不足の時だけ自力で栽培して、レシピも自力で工夫して食べて欲しい。

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