第226話 マルワル村へ再び

「グラマラッカ…パームシュガーって呼んだ方がいいかな?パームシュガーの製法をマルワル村に伝えようよ!甘いミルクティーや紅茶スイーツが出来るよ」


「なあ、それだけか?」

「ルイス?」

「水牛がいたから美味いモッツァレラも作れそうじゃないか」

 ルイス狼の閃きがさえていた。マルワル村では普通のチーズしか作っていなかった。


「ルイスったら天才の発想ね!」

 お姉ちゃん大好きなルイス狼がモニカ狼に褒められて嬉しそうに照れていて可愛い。



 再び馬車でマルワル村に向かうと門番さんたちが驚いていた。

「どうしたんだ?」

「何か忘れたのか?」


「海岸沿いに移動しようとしたらココヤシを見つけたから引き返してきたのよ」

「あんな良いものがあるなら教えてくれよ!」


 門番さんたちがポカン顔だ。少し前にウィルコが植生を広げたばかりだから見覚えが無くて当然だ。


 改めて村に入れてもらって村人たちと話した。


「この近くの海岸にココヤシが生えていて、その果実のココナツや素材をいろいろ利用出来るということか?」

「そうだ。材木になるし葉で屋根を葺いたり繊維を編んで敷物やカゴに加工したりしている地域もあるんだ。果実の皮からは繊維を取り出してタワシも作れる。内側の固い殻は容器としても利用出来るぞ」


「ココナッツ…果実には約1リットルのココナッツジュースが入っているし、実の部分はそのまま食べられるし、すりおろした実を水と一緒に弱火で煮込んで裏漉しすればココナッツミルクになるわよ」


「それに樹液を煮詰めるとパームシュガーになるんだよ!」


相変わらず村人たちはポカンだ。


「一緒に行こうよ!少しだけ一緒に加工しよう?ね?」

 ウィルコの呼びかけに半信半疑の村人たちを引き連れて海岸の方へ進むとさっそく生えていた。


「以前はもっと南で見かけたんだがなあ」

「この辺まで広がってきていたのか」


──さっきウィルコがやりました。


「さっそく採取するよ!」

 ウィルコ主導で果実を収穫して樹液も採取して村に戻る。


 火を起こして樹液を煮詰めている間に果実に穴を開けてココナッツジュース、果実を村人たちに振る舞う。

 果実は残しておいて水と煮込んでココナッツミルクを作る。


「そろそろいいかな」

 トレーに置いた竹の筒に煮詰めた樹液を注いで固まるのを待つ。ココナッツミルクも裏漉しして絞って完成だ。


「紅茶を淹れてミルクティーを作ってパームシュガーを加えると美味しいよ。今日は固まっていない状態で加えるよ」

どうせ溶かすもんね。


「さあどうぞ」


「美味しいわ!」

「甘くすると、こんなに美味しくなるのか!」


 ウィルコが淹れた甘いミルクティーは好評だった。

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