第34話 カンパニアの商人

「それは偶然だな、俺たちもカンパニアに向かっているんだ。今回は仕入れの旅だがサンタンデールやクエンカで仕入れたトマトケチャップや鍋を売れたら売りたい」


「みんなはカンパニアで何を売っているの?」

「自己紹介もせずにすみません。私はパオロ、こちらはステファンとマテオです」

ステファンとマテオが会釈する。

「私はカンパニアで雑貨屋を営んでおります。食料品以外はなんでも扱います。今回は自分の店では扱わないのですが地元のレストランの依頼でプーリアで白ワインを仕入れてきた帰りです」


── ワイン…この子供の身体じゃ飲めない。お酒が飲めないのは本当に辛い。早く目標達成して生まれ変わって飲むんだ。


「良かったら食後にどうぞ」

カレンの身体がピクリと反応した。

── ズルイ!私は飲めないのに!


「しかし売り物では?」

── そうだ!そうだ!開けちゃダメだ!


「いえこれも契約内なんです。旅の食事は侘しいので酒を飲んで眠るようにという」

── なんですと!?護衛が酔っちゃだめだし!


「ウィルコ神の計らいで盗賊が自動的に犯罪者施設に送られるようになって旅が安全になりましたし飲んで酔っても問題ありません」

── 誰だよ!そんな仕組み作ったの!?私だよ、ちくしょう!


「ほう…これはスッキリして飲みやすい」

── 飲んでるし!ルイスとモニカとウィルコだけ飲んでるし!


カレンの機嫌が急降下だ。

── 誘うんじゃ無かった、一食の恩を仇で返されたよ。


「ほらカレン」

ルイスが私にカップを持たせる。

「良いの?」

「果汁で薄めるぞ」

「うん!」

 ルイスが私のカップに白ワインを注いだ上にモニカがオレンジジュースを注いでくれる。ほぼオレンジジュースだ。


「いただきまーす!」

ちびりと飲んでみる。

「どうだ?」

「オレンジジュース!」

 全然白ワインの気配がしないよ、結構はいってたのに残念。でも雰囲気は味わえるね、ご機嫌でちびちび飲む。

 ルイスもモニカもウィルコもパオロもステファンもマテオも微笑ましいものを見るように私を見てる。ちょっと恥ずかしい。


「良ければ一緒に行かないか?明日の食事どきに、この鍋の使い方を見せてやる」

 炭をまぶしたようなダッチオーブンを不思議そうに見ていた3人にルイスが提案する。

「私たちは元々傭兵だから大型の獣に襲われても返り討ちにしてやるから安心なさい」

「是非、お願いします」

「じゃあ片付けちゃおうか」

 ウィルコが立ち上がるとルイスとパオロとステファンとマテオも立ち上がる。夕食の片付けをしなきゃと思うが眠くて仕方ない。モニカに寄りかかって動けない。


「ワインが効いてるな」

「このまま寝かせちゃうわ」

「片付けは任せろ」


 私はモニカに抱っこされて馬車の荷台に運ばれた。本当に子供みたいだけど、ちょっと嬉しかった。

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