第184話 牛肉の黒ビール煮込み

「ねえ、あれは?」

「あれ?」


「黒ビールでお肉を煮た料理があるって言ってたじゃない?」

「アイルランド風牛肉の黒ビール煮込み?ビールでお肉を煮込む料理はカルボナードと言ってベルギーにもあるよ、どっちも牛肉を煮込んだ料理だよ」

「それ食べたい!両方とも今日の夕飯にどうかな?夜はまだ冷えるし」

「いいね!じゃあ材料を買うね」


 お肉と聞いてルイス狼とモニカ狼が寄ってきた。

「大きなお肉を買おうね」

 ルイス狼とモニカ狼の尻尾が勢いよく振られて可愛い。


── アイルランド風牛肉の黒ビール煮込みのために牛肉はもも肉の塊を、カルボナードのために牛バラ肉の角切りをたくさん買おう。ビールはアンバーも買ってバラ肉はアンバーで煮よう。


ビールも…ちょっとくらい飲みたいな…。

早く大人に戻りたいよ。



 ポチポチして注文を確定すると商品が大きな段ボールで届いた。



「じゃあアイルランド風牛肉の黒ビール煮込みから作ろうか」


 牛肉は3〜5cmくらいにカットして薄力粉をまぶしたらフライパンで牛肉に焼き目をつけておく。

 半分にカットしたマッシュルーム、スライスしたニンニク、薄切りの玉ねぎと、筋を取った薄切りのセロリをダッチオーブンで炒めて野菜がしんなりしたら牛肉を入れて、トマト缶と黒ビール、ローリエを入れる。灰汁を取りながらじっくり煮込んだら塩胡椒で味を整えて出来上がり。



「美味しい匂いがするわ!」

 モニカ狼とルイス狼が近いので少し下がってもらった。



「次はカルボナードね!」


 牛バラ肉を塩胡椒で炒めていtらん取り出す薄切りの玉ねぎを飴色になるまで炒めたらお肉を戻し入れてビール、ワインビネガー、黒砂糖、タイム、ローリエを入れて灰汁を取りながら煮込む。

 マスタードとワインビネガー、残り物のパンを千切りながら入れてさらに煮込む。牛肉が柔らかくなるまで2時間くらい煮込んだら塩・胡椒で味を整えて完成。


── お肉の部位が違うだけで、ほぼ同じだな。


「モモ肉とバラ肉を食べ比べ出来るなんて嬉しいわ」

「モモ肉もバラ肉も美味いよな!」

 ルイス狼とモニカ狼にとっては別物らしい、良かった。


「付け合わせはベルギー風にしよう!野菜入りマッシュポテトのストゥンプと小エビのマヨネーズ和えをトマトにつめたトマト・オー・クルヴェットね!」


 今日のストゥンプはタイムやローリエで風味付けした野菜入りマッシュポテト。今日は玉ねぎ、ニンジン、グリーンピース入り。本場のストゥンプは大きなソーセージやベーコンや目玉焼きと一緒に提供されるんだけど、今日は煮込み料理の脇役として控えてもらう。

 煮込み料理が汁っぽいので今日はスープ無し。


「ご飯にしよう!」


「カレンはこのくらい?」

「うん、ありがとウィルコ」

今日はウィルコがよそってくれた。


「モモ肉が美味しいわ!」

「姉ちゃん、バラ肉も美味いぜ!」

モニカもルイスも喜んでくれて良かった。


「ウィルコはどう?予想通りの味?」

「うん、料理にお酒を使うのはよくある調理法だよね。このコクはお肉かなビールかな?すっごく美味しい!モモ肉の方とバラ肉の方で味が違うね」


「水を入れずにビールだけで煮込むから、どのビールを使うかで味が決まるんだよ、バラ肉の方はアンバーエールで煮込んだの」

「へえー面白いね。今度また違う種類で作ってみようよ」

「お肉の種類を変えても美味しく作れるよ」


「じゃあ今度は豚肉でやりましょう」

「大賛成だよ姉ちゃん!」



4人の食卓は今日も楽しくて美味しい。

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